「最初はわけわかんないと思うけど、何回も聴くうちに好きになるよ」と大学生の頃に友人に勧められて購入した1997年発売のレディオヘッド3rdアルバム。
あれから10年近く聴き続けているCDだが、確かに、今はかなり好きだ。まず何よりタイトルとアートワークが格好いい。音楽的には、バンドサウンドのギターロックとコンピュータ処理された電子音楽の融合。冒頭の#1 Airbagのギターのイントロから始まりから、静と動の緩急をつけつつ、苦悩するトム・ヨークの呻吟と共に、全編を油断できない不穏な空気が貫く。1990年代の世界の、巨大に産業化され、効率化された社会に人間性を蝕まれ、内面が壊れていく個人の断末魔が表象される。この感覚が(国は違えど)時代性として、『ファイトクラブ』や『アメリカンビューティー』に繋がっていったんだろう、と想像できる。物質的には豊かだけど、心が死んでいる人たちの世界。
とっつきやすいのは#5 Let down, #10 No surprisesだと思うが、聴き込めば全曲味わい深さがある。個人的にはレディオヘッドは本作~7th アルバム(In Rainbows)までのスタンスが好きだ。それ以前は青臭すぎるし、それ以後はやや迷走している感がある。実験性と娯楽性のバランスに関しては本作がベストであると思う。