打海文三のハードボイルド小説。2002年作品。
大陸からの難民が住み着き無法地帯となった福井県の港湾都市・海市(かいし)を舞台に、中韓露のマフィアと警察の勢力が入り乱れる暗闘を描く。複数の事件が起き、関わる人々の視点が切り替わることで、次第に全体像が見えてくる。陰惨な暴力描写と緻密なプロットが特徴で、読み応えはハードである。
思い出したのは東野圭吾の白夜行(小説)とLAコンフィデンシャル(映画)。雰囲気はジェイムズ・エルロイ的なノワールであり、横山秀夫の警察小説のようでもある。都市のアンダーグラウンドな因果に翻弄される人々が描かれるが、特定の人物の心情が描かれないことによって、その凄みが際立つ。凄惨な暴力の応酬、憎しみの連鎖、疲弊と悪徳が渦巻く世界のなかで、人は何を想い、どのように生きるか。それは『ウシジマくん』のような、激辛の中に残る旨味がある。
読むには難易度が高く、万人に奨められる作品とは言い難いが、また再読したくなる味わいがある。
人は傷つけ、騙し、奪い合い、ほんの少しの愛を見つける。
人は傷つけ、騙し、奪い合い、ほんの少しの愛を見つける。