『この世界の片隅に』の前作。掌編二つ入り。
連載は2003年から2004年。全1巻。
夕凪の街
広島の原爆投下の後の話。市井の人々の何気ない日常が描かれるが、やがて後遺症が…という話。娯楽作品としての構成云々というよりも、作者が伝えたかった現実をあるがままに描いた感がある。
桜の国
夕凪の街の続編。広島の原爆投下後、2世代ほどあとの人々の話。時系列的な意味で爆心地(グラウンドゼロ)から遠く離れても、人それぞれに傷跡は残る。そのような心的外傷にいかに折り合いをつけて生きるか、という話だと思う。プロットが複雑で解説の要素も少なく、初読ではよくストーリーが掴めなかった。構成を理解すると、いい話だと思えた。戦争の悲劇と、人間の内面の強さによる克服。それらが生む情感が、作者の創作意欲の核の部分にあるものらしい。
悲しみがあり、愛がある。はだしのゲンより、小学校に置くならこっちでしょう。