2018年11月22日木曜日

コービー・ブライアント 失う勇気


 2016年に引退したコービー・ブライアントの伝記。20年に渡ってバスケットボール界の頂点に君臨し、栄光とバッシングを浴び続け、「NBAで最も好き嫌いの分かれる選手」とも評された男の人生。彼はどんな環境に生まれ、どのように生きてきたのか。ベテラン記者の周到な取材によって明かされる。

 記録は彼の出生前、NBA選手であった父親 ”ジェリービーン” ジョー・ブライアントとの因縁まで遡って描かれる。愛情と規律のある家庭環境、フィラデルフィアでの少年時代、イタリアでの日々、頭角を現した高校時代を経て、17歳でNBA入りしてからの苦難と栄光、そして、2016年に37歳で迎えた伝説の引退試合に続く軌跡。

 読んでわかるのは、コービー自身はバスケットボールにひたむきに取り組んだ真っ直ぐな男だということ。尽きることない向上心と凄まじい練習量によって培われたバスケットボールの能力が開花する一方で、家族やチームメートなど周囲との軋轢が生まれ、コマーシャリズムが絡み、人生が複雑になっていく。ピュアな情熱が、現実社会の有象無象の欲望によって汚されていく感じ。だが私生活がボロボロでも、コート上でのバスケットボールに彼は救われていた。そしてそんな彼のプレーは、観るものにも多くのものを与えた。

 分厚い本だがなかなかいい読書体験だった。日本語版の副題はドンマイ。
   

2018年11月21日水曜日

さくらん


 安野モヨコの江戸時代の遊郭の漫画。既刊1巻。連載は2003年頃。

 The 女の感性、という作品である。時代考証はしっかりしている(と思う)。同作者の他の作品にも見られる痩身、反骨心、性行動を特徴とする女性像の表現には病理を感じる。椎名林檎の作品の世界観に通じるものがある。不全感を溜め込む20代~30代の女性にニーズがありそうだ。欲求不満の女性性の代償。

 人間全般への造詣を深めるための教材として、読んでおいて損はないだろう。女性の心情の機微よ。
   

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