1980年代のアメリカ、海軍の上位1%のエリートパイロット養成所の話。
負けん気の強い若造が勇敢に戦い、成長し、ロマンスを楽しむ。
生きることが今よりももっとシンプルだった時代の話。
精悍な顔つきのトム・クルーズを観るための映画。
そう−−−ギャツビーは最後の最後に、彼が人としてまっすぐであったことを僕に示してくれた。果たされることなく終わった哀しみや、人の短命な至福に対して、僕が一時的にせよこうして心を閉ざすことになったのは、ギャツビーをいいように食い物にしていた連中のせいであり、彼の夢の航跡を汚すように浮かんでいた、醜い塵芥のせいなのだ。
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何となく気にはなっていたけれど手に取るには至らずに本棚で眠っていた本。出張の長時間の移動の合間に読み始めたが、一泊二日で読み終えて、自分にとって大切な一冊になった。
近代アメリカ文学を代表する名作として名高いこの小説は1920年代のアメリカ東海岸の物語である。証券会社で働き始めた主人公ニック・キャラウェイは、ニューヨーク郊外のロングアイランドの岬の小さな安普請に住むことになった。そこで彼は豪奢な邸宅に一人で住み、週末には絢爛なパーティーを開催する奇妙な隣人ジェイ・ギャツビーに出会った。
情熱的な恋と幻滅。下層から成り上がった一人の男の人生の悲しみ。心の流れが精緻に描かれ、情景の一つ一つが胸に迫ってくる。綾を織りなすプロット、命の宿る登場人物の造形、息づかいを感じる文章のリズム、全ての調和が美しい。時代を超えて読まれ継がれる歴史的名作というのも頷ける。
今回読んだのは村上春樹の翻訳によるもので、原文の雰囲気を忠実に再現しようとしたそう。氏の思い入れたっぷりのあとがきも味わい深い。容赦ない悲しみを傍観する淡白な主人公の視点など、カート・ヴォネガットやジョン・アーヴィングと同じく村上春樹文学を形成するセンスの源流が感じられる。
いつかまたじっくりと読み返したい。そう思える傑作。
母の死を描いたリリー・フランキーの自伝小説。2006年度本屋大賞。
エッセイや対談と同じように、作者特有のユルい空気と文化的素養とキレのある洞察が混在しながら回想が進む。北九州での少年時代、大分の高校での下宿生活から大学以降の東京での生活。ファンキーで笑える楽しいエピソードが多いが、どの時代にも必ず母との思い出がある。
泣けるかと問われると、私のツボにはこなかった。
絆を描く家族の物語としてはいい感じ。時々現れるオトンが実にいい。
ふざけているようで本気。読んでいる最中ずっと楽しい。
これがきっとリリー・フランキー節。