2015年7月26日日曜日

3年目


 とはいえ、共感を強めることについて言えば、私たちの人間らしさを増すうえで、2000年前からとても成功している伝統がある。それは、人文科学を質の高い形で経験することだ。人文科学とは、文学、外国語、哲学、歴史、音楽、芸術といった学問で、今では「役立たず」と言われることもあるが、かつてはどんな教養人にとってもいわば共通通貨だったものだ。素晴らしい小説を読んだり、ソナタを聴いたり、ほかの文化や別の時代の理解を深めたりすることで、他者の頭の中に入り込むときにいつも、オキシトシンのシステムが調整され、高められることを私たちは思い出す必要がある。 
The Moral Molecule    Paul J Zack


・・・


 試みは今も続いている。

 多彩な物語に触れ、内容の理解に努めることは人間世界への洞察を深める最良の手段である。宗教の教典であれ、AV男優の立志伝であれ、日常系のほのぼの漫画であれ、歴史上の事件を扱った映画であれ、鑑賞する側の心持ち次第で、人間の本質に近づける。

 良質な物語に魅せられ、感情を動かすことで現実問題への対処能力を上げることができる。窮地を切り拓き、退屈と倦怠を脱し、挫折や失敗からの再起や、未知なるものへの挑戦の後押しをする。良質なナラティブ(物語)がレジリエンス(逆境を跳ね返す力)を生み出す。そんな理想は当初から変わらない。

 難しい話じゃない。
 選択に迷った時に、貴方の脳裏に浮かんだイメージや言葉の出所を辿るだけ。スラムダンクのワンシーン、ミスチルの歌詞、天地明察の「勇気百倍」、イチローのインタビュー、GIANT KILLINGの達海の指揮、ヘミングウェイの美意識、アルゴの大真面目な悪ふざけ、GOの杉原の理想、西原理恵子の痛烈なディスり、峰なゆかが斬る男女の自意識と現実。物語に出逢うことで人生経験を補完し、実体験と共鳴し理解を深める。清濁を併せ吞み、酸いも甘いも噛み分け、人の世の道理と心の綾を読む能力を安全に身につける方法なのである。生物学的機序においても、情緒的な観点からも、精神衛生上とてもよい。

 単純に言うと。
 「面白い本ある?」と言われた時に「それはね、、、」と取り出す最強の1冊。1枚でも、1本でもいい。好きな人に、弱っている人に、分かってない人に、困っている人に、心の底からお勧めできる最強の物語を準備するための試み。そのための伏線としてこのブログは続く。読んで、観て、書いて、金貯めて、調べつつ。10年続けば、今よりもっと形にできるだろう。

 というわけで、物語に出逢える理想のカフェ作りのため、このブログは続きます。
 暇な時に読んでください。



☆おまけ☆
カフェに置きたい作品100。
  1. プラネテス(漫画)
  2. スラムダンク(漫画)
  3. リアル(漫画)
  4. バガボンド(漫画)
  5. 幽々白書(漫画)
  6. レベルE(漫画)
  7. ハンターハンター(漫画)
  8. ろくでなしブルース(漫画)
  9. ROOKIES(漫画)
  10. ジョジョの奇妙な冒険(漫画)
  11. 孤独のグルメ(漫画)
  12. ピンポン(漫画)
  13. ピューっと吹くジャガー(漫画)
  14. 天使なんかじゃない(漫画)
  15. のだめカンタービレ(漫画)
  16. pink(漫画)
  17. 寄生獣(漫画)
  18. GIANT KILLING(漫画)
  19. ワンピース(漫画)
  20. アラサーちゃん(漫画)
  21. グラップラー刃牙(漫画)
  22. ニャ夢ウェイ(漫画)
  23. 岡崎に捧ぐ(漫画)
  24. 闇金ウシジマくん(漫画)
  25. キングダム(漫画)
  26. ドラゴンボール(漫画)
  27. ドラえもん(漫画)
  28. 神の雫(漫画)
  29. 失踪日記(漫画)
  30. 金魚屋古書店(漫画)
  31. うしおととら(漫画)
  32. からくりサーカス(漫画)
  33. 俺の空(漫画)
  34. サラリーマン金太郎(漫画)
  35. 三国志 横山光輝版(漫画)
  36. デビルマン(漫画)
  37. 東京大学物語(漫画)
  38. よつばと!(漫画)
  39. レモンハート(漫画)
  40. GO(映画)
  41. ショーシャンクの空に(映画)
  42. ファイトクラブ(映画)
  43. グッドウィルハンティング(映画)
  44. スラムドッグ$ミリオネア(映画)
  45. ゼロ・グラビティ(映画)
  46. 最強のふたり(映画)
  47. ノッキンオンヘブンズドアー(映画)
  48. シティ・オブ・ゴッド(映画)
  49. きっとうまくいく(映画)
  50. アメリ(映画)
  51. プラダを着た悪魔(映画)
  52. エンドレス・サマー(映画)
  53. ラブ・アクチュアリー(映画)
  54. ウルフ・オブ・ウォールストリート(映画)
  55. マッド・マックス 怒りのデスロード(映画)
  56. クワイエットルームにようこそ(映画)
  57. ダイ・ハード(映画)
  58. 魔法少女まどかマギカ(アニメ)
  59. 天空の城ラピュタ(アニメ映画)
  60. 千と千尋の神隠し(アニメ映画)
  61. 新世紀エヴァンゲリオン(アニメ)
  62. GO(小説)
  63. 映画篇(小説)
  64. レボリューション No.3小説)
  65. ドクターズ(小説)
  66. 永遠の出口(小説)
  67. グレートギャッツビー(小説)
  68. ねじまき鳥クロニクル(小説)
  69. あなたの人生の物語(小説)
  70. マルドゥックスクランブル(小説)
  71. 天地明察(小説)
  72. 永遠の0(小説)
  73. 沈まぬ太陽(小説)
  74. 姑獲鳥の夏(小説)
  75. 魍魎の匣(小説)
  76. スローターハウス5(小説)
  77. 星を継ぐもの(小説)
  78. 69 sixty-nine(小説)
  79. 悪童日記(小説)
  80. 波の上の魔術師(小説)
  81. ヘミングウェイ短編集(小説)
  82. レ=ミゼラブル(小説)
  83. 罪と罰(小説)
  84. そして誰もいなくなった(小説)
  85. しあわせの理由(小説)
  86. 波の上の魔術師(小説)
  87. NOVA(小説 アンソロジー)
  88. 龍馬がゆく(小説)
  89. 水滸伝(小説)
  90. 100万回生きたねこ(絵本)
  91. 勝ち続ける意思力 梅原大吾(新書)
  92. 世界をだました男(ノンフィクション)
  93. スパイのためのハンドブック(ノンフィクション)
  94. フェルマーの最終定理(ノンフィクション)
  95. 冒険投資家ジム・ロジャース世界バイク紀行(ノンフィクション)
  96. ローマ人の物語 ユリウス・カエサル(歴史)
  97. 堕落論(評論)
  98. 銃・病原菌・鉄(評論)
  99. グラビアン魂(対談)
  100. 経済は「競争」では繁栄しない (科学エッセイ)
  

2015年7月20日月曜日

マッドマックス 怒りのデス・ロード


 いい意味で、振り切っている。

 核戦争後に荒廃した『北斗の拳』的な世界で(※マッドマックスの方がオリジナルだが)、寡黙で孤高の男マックスが水を支配し暴力と洗脳を用いてコミュニティを牛耳るイモータン・ジョーの支配下から逃げ出し、、、という話のシリーズ4作目。

 だが、筋はどうでもよく、様式美を楽しむべき痛快な娯楽作品である。クレイジーすぎてニヤニヤが止まらない、改造しまくった車の暴走と、息もつかせぬ車上での激しいバトルをひたすら楽しむべきである。

 この美学の同一線上に漫☆画太郎先生やマキシマム・ザ・ホルモンの表現する世界があるのだ、と得心した。ロックで、パンクで、欺瞞や退屈を吹き飛ばすパワーがある。まさにMad (狂気) Max(全開)。

 人として失っちゃいけないものを再確認できる映画だと思います。勢いとか。
   

2015年7月18日土曜日

アルゴ


 1979年、イランで革命が起こりアメリカ大使館が暴徒に占拠された。人質の一部は大使館から辛くも脱出しカナダ大使館に匿われるも、イランの秘密警察に見つかればアメリカへの怨念を募らせた民兵による拷問や死刑に処されるのは明白。そんな絶望的な状況下、取り残された6人の大使館職員らを国外へ脱出させるべく、CIAの人質救出専門家である男による前代未聞の計画が始動した、、、という話。2012年の第85回アカデミー作品賞受賞作。

 寡黙で信念に生きるベン=アフレック(主人公、監督でもある)の男ぶりに加え、正体が見つかれば死というスリリングな展開と、荒唐無稽な発想の妙が純粋に面白い。何より実話に基づく話であるということが衝撃。事件後よりこの計画はアメリカの国家機密に指定されていたが1998年に機密の指定を解除されて18年ぶりに事実が公開されたとのこと。実在の人物による知られざる戦いだったという事実も、なかなか胸に来る。

 是非、余計な前情報なしで観てほしい。作品と歴史的事実の相違については調べると興醒めするので深追いしないことを奨める。純粋に素晴らしい観賞後の感覚が得られた作品だった。
   

2015年7月7日火曜日

梅原大吾


 以前ブロガーのちきりん氏が推していたので読んでみた新書。それは格闘ゲーム世界一のレジェンドの半自伝であり、全ての分野に通じる、勝ち続けるための人生哲学の書だった。

 思い出したのは『バガボンド』の宮本武蔵とミスチルの『未完』という曲(REFLECTION所収)。一つの分野に徹し、勝利を求め模索する中で己と向き合い、道理を悟り、逍遥遊に楽しむ穏やかな涅槃の境地に至る道筋、、、ということで仏道に通じる。

 暑苦しいと避ける人もいるだろうが筆者は好きだ。精神科医であれ、プロ野球選手であれ、証券アナリストであれ、ナンパ道であれ、格闘ゲームでなくともあらゆる分野に通じる思考様式が展開される。筆者は読んでいて身につまされ、何か一つの分野に徹底的に向き合い、限界まで突き詰めたい衝動に駆られた。それはきっと人生を最高に楽しむための秘訣。

 毎日頑張れ。常に変化せよ。そして、楽しめ。
   

エンドレス・サマー


 サーフィン映画その2。

 若いアメリカ人の兄ちゃん2人がperfect wave(完璧な波)を探して世界を旅するロードムービー。カメラマンを加えた3人のみで撮られた作品らしく、ドキュメンタリーな雰囲気。

 アフリカの西側から南端へ。オーストラリア、ニュージーランド、タヒチへ寄ってからハワイへ。1964年公開の映画だが、撮影された時代背景を考えるとまさに冒険だったんだろうなあ、、、と感慨。インターネットもない時代に未知の秘境へ飛び込み、波に乗って遊び、現地の人と交流する。

 怖いもの知らずの若造の勇気と楽観。シンプルで力強い行動力。陽性の力動。人生を楽しむための示唆に富んでいる。心の健康に良さげな生き様を提示しており、禅的な理想を感じる。 
   
 仕事を辞めて旅に出たくなる。いい映画。
   

ビッグ・ウェンズデー


 サーフィンを趣味にしたらどうなるか、という気分で最近生きていたため、その雰囲気を知るために観た映画その1。

 1960年代。アメリカ西海岸。サーファーとして名の通った通った若者3人の乱痴気騒ぎや色恋。ヴェトナム戦争による離別。そして再会と、伝説の大波への挑戦。

 おおらかでゆるい、サーファーの理想のライフスタイルの片鱗に触れた。

 サーフィンやりてえ。
   
   

範馬刃牙


 刃牙の第三部。全37巻。

 「もはや蛇足では…?」と読みながら思っていた。父・範馬勇次郎との世界最強の親子喧嘩、というテーマで引っ張りに引っ張るが、古代人ピクルとか親子の食事のシーンとか、色モノっぽい奇抜さに走り出したのが個人的には解せない。続ける程にキャラクター達の格が下がっていく気がする。

 第二部(バキ)あたりで止めておいた方がすっきり楽しめると思う。
 第四部(刃牙道)は完結したら読む予定。
    

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