2010年12月発売のミスチルの16thアルバム。
暗い海の底から浮上した魂が、果てなき海の広さを知り、水平線の彼方を目指す。海というイメージから連想されるミスチルのアルバム作品として、『深海』や本作を思い出すのが正しい。ミスチルの作品群の解題において、海というモチーフは重要な位置を占めることに異論はないだろう。(e.g. 深海、paddle、here comes my love…etc.)
構成は、#1 I の我執に囚われた世界から、様々な遍歴を経て次第に魂は浄化し、#11 foreverの諦観に至る。アルバムのキーチューンである#2 擬態には、酸いも甘いも噛み分け、無心に近づこうとする禅的な男の達観がある。ワンピースとのタイアップから生まれた#9 fanfareから海の視覚的イメージの着想は生まれたのかもしれない。これまでの遍歴を総括し、励まし勇気づける#10 preludeもメッセージソングとして感動的。そして、静かに自省する#8 蒼の存在感もいい。
発売前に一切の情報が伏せられており、作品の見せ方もインターネットの発達で情報が氾濫した世界に対するアンチテーゼになっていた。その真髄は不立文字。Don’t think, feel. 言葉ではなく感じろ、ということ。命をも奪う残酷さをもつ海で、生を歓び泳ぐ鯨のイメージ。
実家にこもって国家試験の勉強をしているときに聴きまくった1枚だった。生きる力を与えてくれた。