2017年11月24日金曜日

ミュンヘン


 史実に基づくスティーブン・スピルバーグ監督の2005年作品。

 1972年のミュンヘン・オリンピックで起きた代表選手の殺害事件を受け、イスラエルの諜報機関(モサド)が犯人であるパレスティナ人の暗殺を企てる。同機関の工作員である主人公が標的を追って、ヨーロッパ各国を駆け回る。

 ユダヤ人である自身のルーツを作品に投影するスピルバーグの作風が典型的に表れている作品であるように思う。祖国、ユダヤの歴史、放浪、安住の地の希求、など、枚挙すれば暇がない。とりわけ本作品では、食卓や家族との憩いと残虐無比なテロリズムのシーンの対比が目立つ。国家に殉じる暗殺者の、人間としてのルーツを描く作品になっている。

 そして何より、娯楽映画として観ていて飽きさせない名匠の至芸という風情がある。異国情緒、サスペンス、ロマンスを贅沢に配置しつつ、思い切った省略が功を奏し、サクサク進む展開が気持ちいい。省くべきは省き、見せるべきシーンには時間を割く構成が長尺(163分)の作品を成功させている要因であるように思う。

 これはマイフェイバリットな作品に加わった。スピルバーグ作品では現在首位かも。
   

2017年11月18日土曜日

マグノリア


 ポール・トーマス・アンダーソン(PTA)監督のアメリカ映画。1999年作品。

 10年前に観たときは、深い意味がありそうだけどよくわからない映画だと思っていたが、久しぶりに再視聴して、前よりは意味が分かったと思う。まあ…一言でまとめると大変深みに欠けるが、愛を求め傷つく人達の物語、必然的に連鎖し、偶然性に左右される人々の群像劇である。一つの街で暮らす、男女9人の物語が少しずつ交錯し、ドラマを生む。

 wikipediaで調べたところによると、PTAが主題歌であるエイミー・マンの”save me”(私を救って)という曲にインスパイアされて作った映画らしく、作品にうまくハマって空気を作っている。生活感や微妙な心情の変化が伝わるロングカットの会話劇が特徴的で、音楽が相俟ってスタイリッシュに仕上がっている。3時間以上ある作品だが、展開の緩急の付け方がうまいせいか、あまり飽きさせないのも好感。

 結構好きだった。またいつか観るかも。
    

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