ネットのニュースで安部譲二の訃報を知り、wikipediaでその生涯を読んで興味を持って電子書籍Dolyで買ったエッセイ。2006年~2008年に連載されていたのをまとめたものらしい。文庫版の刊行は2009年。
内容は、昭和の日本を生きた古き良き「悪い人」の回想。きっと詳細を書けない部分が多く、誇張も多分に含まれているんだろうが、それにしてもその生き様が凄まじい。読書家で優秀だった中学生が高校で不良になり、暴力団に入り、逮捕されたり銃で撃たれたりしながら、度胸とハッタリで日本航空のパーサーになったり、ヴェトナム戦争末期のサイゴンで商談したり、世界中を旅して、幾多の死線をくぐり抜け、生き抜いていく。
私はどうも、こういう、一人の人間の可能性の限界に挑戦するような無茶苦茶な人間が好きらしい。フランク・アバグネイルの『世界をだました男』を思い出した。その軌跡を追いながら、自分の心の枷が壊され、精神の自由を手に入れるような体験が得られる。何より、単純に読んでいて楽しい。
こんな無茶苦茶をしながら82歳まで生きたなんて、男として見上げたものがある。格好いいっす。合掌。