偽官軍の汚名を着せられ斬首された幕末の志士・相楽総三の物語。1999年作品。
最初に思ったのは、内容が『水滸伝』と大体同じということ。男たちが志のために戦って死ぬという、それだけのテーマが無駄を削ぎ落とした簡潔な文体で綴られる。中国の北宋、日本の幕末とで固有名詞が変わっても、書いているテーマが大体同じだ。これが北方謙三の確立したスタイルであり、様式美である…という話を先日職場の飲み会で熱弁したら大いにウケた。
志をもって生きること。男らしく死ぬこと。馬鹿馬鹿しいと一笑に付したくなる一方で、時代や場所を越えた普遍の輝きがそこにはある。読めば胸が熱くなる。時代に翻弄されながらも信念のために命を賭して戦い、やがて訪れる理不尽で無意味にさえ思える勇士達の死に様に、読む者は何がしかの意味を見出し、腹の底に残るものがある。そういう物語である。
土方歳三、勝海舟、清水次郎長、山岡鉄舟…魅力的な男たちが多数登場する。
今年、読んでよかったと思える物語の一つになった。