2017年8月1日火曜日

トゥルー・ロマンス


 カンフー映画オタクの男と娼婦のロマンス。1993年アメリカの作品。

 若きクエンティン・タランティーノが脚本を書いた作品で、タランティーノの理想とする自己像や世界観が詰まった作品と言えよう。レンタルビデオ店で働く映画オタクだった自分を主人公に重ねたのは自明であり、偏執的なまでの暴力描写は自身の偏愛を思うがままに描こうとした結果だろう。冴えない男がタフな場面を乗り越え、クールな美女をゲットするというピュアな童貞男子の願望をあけすけに描くのもいい。

 2人が出会う舞台は斜陽の工業都市デトロイトであり、街の色彩はくすんでいて、絶望的な空気が漂う。そんな街のさらに下層の男と女が出会い、危険で無軌道な脱出を試みる…というプロットに普遍性がある。映画のテーマとして、シケた街の冴えない男女が掴むロマンスというのが実にいい。これこそTrue Romance(真実のロマンス)だよな、というのが久しぶりに通しで観た私の感想である。

 若くて荒削りな衝動を描いた佳作である。年を食ってから観るといっそういい、気がする。
   

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