2014年7月28日月曜日

2年目


Here in my mind.
You know you might find.
Something that you.
You thought you once knew.
But now it’s all gone.
And you know it’s no fun.
Yeah I know it’s no fun.
Oh I know it’s no fun. 
(俺の頭の中に、見つかるかもしれない。
 君がかつて知っていたはずの何かが。
 だけど、それは今やなくなってしまった。
 それじゃ楽しくないって分かっているのに。
 そう、それじゃ楽しくない。
 そう、そんなんじゃ楽しくないんだ。) 
Whatever/oasis

•••

 「将来、漫画喫茶をやりたい」という表明は今も続けている。大学生の頃から抱いている理想の軸の部分は全くぶれていない自信があるが、どうしても譲れない信念(というと大袈裟だが)を生み出したのは、筆者自身のほぼ心的外傷ともなっている実体験によるものが大きいと思う。

 「好きな本や漫画や映画の話をできる相手が欲しい」と切実に思ったのが大学の最初の2年間くらいだった。筆者自身、友人や兄妹や出逢って日が浅い相手でも、そういう話題を共有できた時が幸せだったし、その後、現在に至るまで仲良くやれているのはそういう趣味が合う人たちだと思う。しかし、大学の最初の2年間くらいは周囲に(すなわち大学構内に)そういう仲間を見つけることができず、日々孤独を深め、貴重な青春時代が空費されていくことへの焦燥が募るばかりだった。

 で、当時の私なりに必要なものを考えた末、辿り着いたのはこれだった。社交性や美的感覚に欠けるオタクの集団とは違う。どこかの雑誌から拝借したライフスタイルを背伸び気味に着飾る薄っぺらい生き様とは違う。自分の好きな物を偽らず、共有できる相手が見つかる場所。心から愛せる漫画や映画や小説が置いてあり、そうした作品を心から愛する人たちに出逢える、そういう空間。

 漫画『金魚屋古書店』やスティーブン・キングの中編『マンハッタンの奇譚クラブ(原題:The Breathing Method)』がイメージに近い。一気飲みを強制される飲み会や、大学デビュー勢の安っぽい色恋や馬鹿騒ぎに馴染めない人たちがやって来て、自分の趣味嗜好を再確認できる場所。仕事で忙しい社会人がサボって一息ついたり、日々を放漫に過ごす夢追い人が毎日通って自我を保つのに一役買うかもしれない。そういう心のオアシス(陳腐だが、敢えてこう喩えよう)を具象化する方法を考えた結果、これしかない、と大学4年生頃に辿り着いた結論が漫画喫茶の経営だったと思う。学生時代の筆者自身がそういう場所を、ひたすら欲していたのだ。

 立地(北大の近く)、予算(数百万円?)、内装(シンプルで快適)、維持費(テナント代や光熱費)、食べ物(ドーナツ)、飲み物(コーヒー)、雇用(学生バイトは必須)、利益を得る手段(古書の売買とか)など、素人なりにボチボチ調べつつ、実現可能な範囲内で構想は進んでいる。

 コンセプトの一つは「すごくセンスのいい友達の部屋」。そいつがお勧めしてくる本や音楽や映画にハズレはない。毎日通っても、久しぶりにお邪魔しても、居心地がよくて、ついつい長居してしまう。そういう友人が学生時代に欲しかったし、今も欲しいし、できるものなら自分も誰かにとってそういう友人になれればいいと思っている。

 …なんていう夢を、いい大人がガチで追い求める。そんな社会実験の試みの記録の一形態として、このブログは存在している。退屈で、大変で、息苦しくて、摩耗しがちな社会生活に休息を与える場所を作り出すために。『ショーシャンクの空に』のアンディみたいな感じで淡々と、揺るがずに、準備を進められればいいと思う。数年続ければ実現できる気がしてならない。引き続き、御笑覧いただければ幸いです。
  

2014年7月20日日曜日

リリイ・シュシュのすべて


 リリイ・シュシュという女性歌手に救いを見出す、田舎の中学生の話。

 夏休み明けの新学期、過酷ないじめが始まる。傷ついて墜ちた魂が周囲を攻撃し、教室や友人関係の中に刺々しい空気が波及していく。暴力を加え、金品を奪い、性的に貶め、尊厳を踏みにじる。穏やかな田園風景とドビュッシーの清冽なピアノ曲を背景に、陰惨な負の連鎖の中で窒息し、圧し潰されていく少年や少女の魂。

 鑑賞時の胸糞の悪さは『ダンサー・イン・ザ・ダーク』に匹敵する。そして、それは自分の小学校や中学校の記憶が眼前に浮かんで重なり、胸に生じた痛みのせいだという機序にやや遅れて気付く。主人公の少年はリリイ・シュシュ(salyu)の歌声の世界に逃避するが、自分にとってのそれはミスチルだったな、と観ていながら思った。(ちなみに、作中でミスチルという語がサブリミナルでステマしている)

 涙を流し、嘔気を催すほどに、現実世界の不条理に圧し潰された魂に、救いを与えるものは何か?
 観ながらずっと考えていた。自分にとって大切な映画の一つになった。
    

2014年7月19日土曜日

グッドフェローズ


   I always wanted to be a gangster.  To me, being a gangster was better than being President of the United States.
 俺はいつもギャングになりたかった。俺にとっては、ギャングになることはアメリカの大統領になるよりすごいことだった。

・・・

 舞台は60年代のニューヨーク。実話が元になっているギャング映画の名作。

 『タクシードライバー』『レイジングブル』の マーティン・スコセッシ監督と俳優ロバート・デ・ニーロの名コンビ。臨場感を生むハンディカメラで撮ったようなカメラワークと、カット割りの速い軽快なテンポで進む。ホーム・アローンの強盗の小さい方の人がキレた役で出ている。ロバート・デ・ニーロのオーラはそうでもない方。

 ヤクと女と暴力が男心をくすぐる。
 バイオレンスなエンターテイメント映画。

2014年7月6日日曜日

バリーリンドン


 アイルランド生まれの成り上がり者の哀しみの話。

 18世紀の欧州の雰囲気を忠実に再現した映画史上最初の作品として定評がある。当時描かれた絵画の色彩や構図がそのまま飛び出したような映像は、監督スタンリー・キューブリックの偏執狂じみた情熱によって生み出された。蝋燭の火で照らされる室内や窓から差し込む光の加減など、NASAの衛星観測に用いられる特殊なレンズを使ってこだわり抜いて撮影されたものであり、関係者の中では語り草となっているそう。

 3時間近い長尺であり、歴史的考証と人間模様に関して見応えはあるが、ちょっと疲れる。
 美術監督賞・装置賞、衣装デザイン賞などアカデミー賞4部門受賞。

 映画の玄人向けの作品だろう。
    

ブログ アーカイブ