2012年12月31日月曜日

narrative of the year 2012



1位 光圀伝(小説)
2位 魔法少女まどか☆マギカ(アニメ)
3位 世界をだました男(小説)
4位 孤独のグルメ(漫画)
5位 ピンポン(漫画)
6位 オイレンシュピーゲル(小説)
7位 シャイニング(映画)
8位 2つの心臓の大きな川(短編小説)
9位 フランシスマカンバーの幸福な一生(短編小説)
10位 Jeremy Lin(人物)

 定義は特になし。
 今年出会った物語で好きになったものを適当にランク付け。
 次点は星の王子様小説)、メトセラとプラスチックと太陽の臓器(短編小説)、過去と未来と交信する男(ミスチルの曲)、welcome to the black parade(マイケミカルロマンスの曲)、ウィンストン・チャーチル(人物)、フィデル・カストロ(人物)あたり。
 働きながらでも読もうと思えば結構読めると知った今年。
 来年も素敵な物語を探そう。
   

2012年12月24日月曜日

Doctors


  With a single exception they were all white. And with five exceptions all male.  Some were brilliant bordering on genius. Others, genius bordering on madness. One had played a cello recital at Carnegie Hall, another had played a year of professional basket ball. Six had written novels, two of which had actually been published. One was a lapsed priest. One was a graduate of reform school. All were scared to death.

 ただ一人を除いて全員が白人だった。そして五人を除いて全員が男だった。
何人かは天才と紙一重の秀才であり、何人かは狂人と紙一重の天才だった。カーネギーホールでチェロの独奏会を行った者がおり、バスケットボールのプロ選手として一年間プレーした者もいた。六人が小説を書き、二人は実際に出版されていた。ある者は堕落した聖職者だった。ある者は感化院出身だった。そして、全員が極度に緊張していた。

・・・

 1962年のHarvard Medical Schoolが舞台の医学生の群像劇。
 世界最高峰の医学部の日常と研鑽の日々。
 葛藤と成長、出逢いと別れ、親と子ども、男と女。
 若い魂が躍動する。医師の青春の日々が描かれる。

 誰しもに運命の一冊があるなら、自分にとってはこの本がそう。
 文学とバスケットボールを愛する少年が精神科医になる話。
 

2012年12月23日日曜日

皇国の守護者


 結構漫画を読んでて手厳しい評価をくだしがちな人達が皆「面白い」と口を揃える作品。架空の戦記物だが、皇国=日本軍、帝国=ロシア軍(+東欧)のモデルは明らかで、太平洋戦争の時代の空気を感じながら読むのが正しい。人と話せる龍や、導術使い、剣牙虎なんかが登場することで世界観にファンタジックなムードが加わる。

 何がいいって、主人公である新城直衛の人間性に尽きる。短躯と三白眼の凶相、名家に引き取られた戦災孤児という複雑な出自。綺麗事に逃げない。悪評を恐れない。大局を見誤らない。人間味溢れる劣等や怯懦を、冷徹で酷薄な現実主義者の仮面の下に隠して。劣勢も逆境も己の弱さも、受け止めて、最悪の中に最善を見い出す男。

 漫画版は途中で始まって、途中で終わる感じ。
 全5巻なので読みやすいし、薦めやすい。
  

2012年12月16日日曜日

封神演義


 三国志、西遊記、水滸伝と並ぶ中国の奇書を漫画化した作品。殷周(いんしゅう)革命の史実を絡めて描かれる歴史ものであり、そ、仙人が宝貝(パオペエ)という道具を使って戦う世界最古のSFバトルものである(と原作者の解説にはある)。

 藤崎竜版は筆者独自の解釈による改変が全開。キャラクターの造型がgood. 太公望が魅力的なのは勿論だが、一番好きなのは大正老君。作者が相当な変人らしく、随所に異次元なセンスのギャグが光る。

 絵もかなりうまい。ただし戦闘シーンはワンピースと同等、またはそれ以上に見づらいことが多々ある。目が大きい90年代な絵は人によって抵抗あるかも。

 表紙の書き方等、伏線の仕込みもいい感じ。
 楽しんで書いてたんだろーな、感がうかがえる。
  

2012年12月9日日曜日

69 sixty-nine



 かなり好きな小説の一つ。
 1969年、長崎佐世保の高校生の夏を描いた村上龍の自伝的小説(らしい)。

 全共闘。学生運動。フォークソング。
 ビートルズ。ウッドストック。フェスティバル。
 ヒッピー文化と反権力の熱に浮かされた時代。
 既存の秩序が壊され、新しい何かが生まれる予感を誰もが感じていた。

 その余波は九州の片田舎の高校生の日常にも影響を与えた。
 何かを成したくてしょうがないが、いかんせん垢抜けなくてショボい。
 そんな彼らの行動の核心にあるのは、いつも異性にモテたいという単純な欲望。
 あんまり後先考えない感じのバカバカしい勢いが実にいい。

 作者もあとがきに書いているが、モテない奴、人生を楽しんでない人々は容赦なく辛辣に描かれている。
 だがモラルや常識を楯にした批判をするのは無粋。
 生きる歓びに満ちた若造の武勇伝を、ニヤニヤしながら読むのが楽しい。
   

2012年12月5日水曜日

HUNTER×HUNTER



 現存する漫画で最も面白いものの一つ。
 異論は無いはず。
 少年漫画の誕生以来、培い、育んできた「面白さ」を抽出して精製した作品である。

 念能力は全ての少年漫画の特殊能力を一元的に解説できる概念。
 幻影旅団、グリードアイランド、キメラアント...etc.
 どれも純度の高い、これまで誰も見たことのないような境地の戦いを見せてくれる。

 キャラクターの造型も魅力。
 登場する悪い奴が本当に悪い。
 いい奴にも強いクセや味があり、薄っぺらくない。

 新刊にはミスチルのblood orangeと同じ匂いを感じる。
 両者とも震災の影響を受けている。
 制作者自身も何を表現すべきか分からなくて。
 戸惑いの中、希望を求めて、その「祈り」の欠片が断片的に配置されているような感じ。
 絵柄もその影響下にあって。
 過剰にも見える子供っぽさと、大人の冷徹さが同居する。
 理解されることを拒むような難解さがあるけど、驚くくらい単純なテーマを書いてたりする。
 祈りの断章。
 なんだか、そんな感じで。

 もっと続きが読みたい。
 富樫の感性こそがこの国の宝。
  

2012年12月2日日曜日

村上智彦


 今、日本の医療っていうのは世界一です。皆さんは世界一の医療を受けているんです、知ってましたか?  つい2年前のカナダの保険会社の調査でも日本の医療はダントツで世界一です。世界で一番長生きで、世界一乳児死亡率が低くって、病院へのアクセスがいいです。みんな好きな病院を選べますね。
 ところが問題があります。国民の医療に対する満足度が非常に低いのです。

・・・

 地域医療界の橋下徹的存在。

 好戦的で、役所体質とマスコミが大嫌い。統計数字を持ち出し、国際的な視点を絡めながら、日本の医療システムの問題点を整然と論じる。行動派の人で、役所と折衝しながら肺炎ワクチンの公費助成を実現させたり、住民の高齢者比率日本一&財政破綻という夕張町に自ら飛び込んで医療の立て直しに挑んだりする。

 理想と責任感を持って戦う男のモデルケース。学生の頃に夕張に会いに行った時も、その理想の一端を熱っぽく話してくれた。

 久しぶりに氏の本を読んで思い出した。己の全存在をかけて、自分の納得いかないもんと戦い続ける。この国に一番必要なのはそういう男だと思う。
  

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