元CIA職員でアメリカ政府の大規模監視を告発したエドワード・スノーデンの独白。原著は2019年9月。日本語訳は2019年11月発売。
2013年にアメリカ政府の大規模監視をジャーナリストに告発した彼は、何を見て、何を考え、その行動に至ったのか。本人の回顧録という形式で、幼少期からのその軌跡を辿ることができる一次資料になっている。文体に表れるスノーデンの素のキャラクターは、ユーモラスで賢いアメリカ白人の王道を行くようなタイプで、リベラルで反体制なハッカー気質の矜持を感じる。
2020年現在、世界中の人がスマートフォンなどのデジタルデヴァイスを持ち、役所や病院、一般企業などで個人情報が管理される時代。インターネット黎明期の1990年代からどっぷりとコンピューターの世界に浸かってきた彼は、情報管理システム構築の実務にも携わり、その仕組みが内包する恐ろしさを熟知している。アメリカの監視も不快感を催すが、中国共産党が顔認証のカメラやウェブ履歴の永久保存で行う情報管理も脅威だ。国家権力によるオンラインでの監視/管理と個人の自由の問題は、2020年代も引き続きメイントピックになるのは間違いない。
今読む価値がある本だし、今後、ITと個人情報保護の相克を語る上では欠かせない古典となるだろう。大量監視社会の到来を恐れ、憂いている多くの人にお奨めする。