”白ブリーフ判事”として有名になった現職の裁判官・岡口基一による最高裁判所との戦いの記録。2019年3月刊行。
岡口氏は長年にわたり積極的にTwitterによる情報発信を行っていたが、その内容により裁判官としての「品位を辱める行状」があったとして、最高裁判所の分限裁判(裁判官を処罰する制度)に申し立てられた。しかしその手続き内容と論旨に法曹として納得がいかず、その不備を広く国民に知らしめ、裁判所批判の端緒にすべく執筆されたのが本書である…と思う。
基本的にプロの法曹の手による格調高い司法関連の書籍のような文体なのだが、その内容のくだらなさがだいぶ笑える。これは狙っていると思う。岡口氏はTwitter上で白ブリーフ一丁の画像を晒し一躍有名人になった人物であるが、その奇行に似つかわしくなく、裁判官としての評価が高い人物でもある(高等裁判所の判事になっていることからも実績や能力が窺えよう)。人間くさい下品さと諧謔精神を持ち合わせながらも、科学性・合理性を重視する冷徹な論理的思考を持つ人物であることは、本書の随所からもうかがえる。そして彼は、その明晰なロジックで、現在の最高裁判所の凋落ぶりを暴き出し、嘆き、糾弾する。
正直、岡口氏の表現活動の下品さは、贔屓目に見ても裁判官という職業の品位を辱めていることには間違いなく、不快感を感じる人が多数いることは理解できる(私もだ)。だがそれでも、彼はいいことを沢山言っているのもまた間違いのないことである。国民は、裁判所により意図的に作り出された「高潔な裁判官という人間像」によらず、適正な手続きと確実な根拠によって導き出された論旨により、判決を判断すべきである。それを気づかせるために、岡口氏は体を張って戦っているのである。
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そして、国民は、少なくとも、「秘密のベールに包まれた裁判官は信頼できる」という古代的な発想はもたないようにすべきである。しっかりと手続保証をした訴訟指揮をして、科学的・合理的な判決理由を示すことができる裁判官であれば、たとえ、オフの生活での人間くささが丸わかりになっていてもまったく構わないはずである。
本書p192 第Ⅳ部 「司法の民主的コントロール」は可能か? より