英国の小説家チャイナ・ミエヴィル著。2009年作品。
東ヨーロッパのバルカン半島に、ベジェルとウル・コーマという二つの都市国家が、同時に同じに場所に存在するという設定。互いの街の人間は交流を禁じられ、互いに見て見ぬ振りをする独特のルールが厳格に実施されている。そんな場所である日、変死体が発見される。所轄の刑事である主人公のティアドール・ボルル警部補は、その捜査を開始し、次第にトラブルに巻き込まれ…というのが筋。
<ブリーチ>、<クロスハッチ>などの独特の表現が多く、最初は面食らうが、世界観が次第に見えてきて、慣れてくるとグイグイ読める。古典的な刑事物、ミステリー物の空気感を大事にしつつ、特異な設定の部分が後半に進むほど生きてくる。世界観の構築や登場人物の掛け合いなど、全体に質が高いので、異質の世界の冒険にどっぷりと浸れる。小説を読むことの原初の喜びを味わえる。
ディック-カフカ的異世界を構築し、ヒューゴー賞、世界幻想文学大賞をはじめ、SF/ファンタジイ主要各賞を独占した驚愕の小説…とハヤカワ文庫の背表紙の解説に書いてあるが、だいたいその通りである。期待は裏切らない。