2018年10月30日火曜日

この世界の片隅に(原作)


 大ヒットしたあの映画の原作漫画。連載は2007年1月から2009年1月。単行本は全3巻。

 映画同様、戦時を生きた市井の人々の生活のディテールに徹底的にこだわり抜いており、もはや歴史的史料の趣きがある。そして、映画は原作に忠実に映像化しようと試みていたのがわかる。色街のりんちゃんの話も、原作ではもう少し詳しく出てくる(…が読者の想像に委ねられる部分が多い)。

 時代考証へのこだわりは、作者こうの史代の出自に関わる部分の影響が大きいようだ。前作『夕凪の街 桜の国』のあとがきに詳しいが、作者は広島生まれ広島育ち。だが親類の被曝など直接の関連がないこともあり、原爆投下の歴史的な意味から目を背け続けて生きたきたことに後ろめたさのようなものがあったらしい。その問題意識や使命感が、当時の生活を再現し、記録し、伝えようとする創作の動機の源泉となったと思われる。

 そんな制作背景を知らずとも、素晴らしい漫画である。
 はだしのゲンじゃなくてこれを小学校におけや、というのが私の主な感想である。(最近はどうなんだ)

   

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