中国系アメリカ人作家ケン・リュウのSF短編集。文庫は2017年発売。
又吉直樹がテレビで紹介して有名になったらしい表題作『紙の動物園』など7篇を所収。全体として、中国系のルーツを持つ人間がアメリカ文化に出会うことで直面する相克と葛藤がテーマが底に流れる。グレッグ・イーガンやジェイムズ・ティプトリーJr.の系譜に連なる、異文化と出会うことで訪れるアイデンティティの危機を描くことが多い。
好きだったのは『紙の動物園』と『文字占い師』。両作ともにファンタジーの要素(魔法や呪術)が登場するのも特徴的だが、それはさておき異文化の中で苦しんで生きる人間の描き方が素晴らしい。作者の実体験の影響が大きいのだろうが、日本人が大雑把に理解しがちな諸外国に住む中国系の人々の心情の機微を理解するのにこれ以上ない教材となろう。
しかしまあ、同じ中国系ならテッド・チャンの方が好き。こちらは情に訴えるウェットな感じが強い。
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