2017年10月23日月曜日

アメリカン・ビューティー


 アメリカの中流家庭の崩壊を描く映画。1999年作品。

 10年くらい前に観たときは意味がよく分からなかったが、今観直してみて、昔よりも理解できたと確信できる。20世紀までのアメリカの中流階級の伝統が揺らぎ、混乱のさなかにある人々の姿が閑静な住宅街に潜む狂気を通して描かれている。

 この映画で描く人々の歪みが、後のトランプ政権を生み出すことになるアメリカに堆積した不全感に繋がるんだろうと思った。物質的に満たされても得られない充足感、傷つく夫の自尊感情、飽くことのない妻の上昇志向、近所に住む同性愛者のカップルとそれを苦々しく思う軍人、信頼の置ける価値基準を持てないティーンズの葛藤、など。ステレオタイプに信じられてきたこれまでのやり方が通じない時代の変化に皆が戸惑い、出口のない閉塞感と寂しさを抱き、救いを求めている。

 そんな時代を包む不安と混沌を、頽廃的な美として映像的に表現した映画である。好きだ。
   

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