共感性羞恥という言葉がある。「マツコの番組でやってたんだけど…」という振りで全然関係のない3人くらいの人に同じような話を聞いたので、最近流行っているらしい。他の人が恥ずかしい目に遭っているのを見ると、自分も恥ずかしさを感じてしまい辛くなるというタイプの人がいる…という概念のようだ。
そんな共感性羞恥の強い人からすると、読んでいて最も辛い読書体験になるであろう壮烈な漫画作品がこの『最強伝説 黒沢』である。工事現場で働く、頑強な肉体以外になんの取り柄もない独身の44歳の男、黒沢。そんな彼が冴えない日々の中で自身と向き合い、絶望し、救いを求め、その多くが裏目に出る。そんな彼の惨めで哀しい闘いが綴られる単行本全11巻の記録である。
前々から気になってはいて、この度手に取って全巻を通読してみたわけだが、「これほどまでに人間の尊厳に向き合った漫画作品がかつてあっただろうか…」と読んでいて感銘を受けた。洗練とは無縁な、粗雑でたどたどしい言葉で語られる黒沢の言葉には魂がこもる。共感性羞恥が強い人(私も)は読むと痛々しくて苦しくなる。しかし、真実の言葉が胸を揺さぶる。極めて実存主義的な、人間存在への根源的な問いを投げかける至高の作品である。私の中で、心の専門家を目指す人には是非読んでほしい本シリーズに追加された。これが人生だ。
★おまけ 心の専門家になる人に読んでほしい本★
最強伝説 黒沢 ←new!!
0 件のコメント:
コメントを投稿