2013年1月26日土曜日

Mr. Children



 ミスチルの魅力とは何か。

 バンドブームも終焉に近い90年代前半に登場した彼らは、話題性のあるキャラクターも目を引くようなビジュアルもなかった。ただ、普通に演奏が巧かった。そして、音楽が好きだった。あまり欲がなく、アクの強さもない。大人しくて、地味で、いい人っぽい普通の兄ちゃん達の集まりだった。

 1992年のデビュー後も華やかな脚光を浴びるでもなく細々と活動していたが、変に焦って奇を衒うでもなく、卑屈に模倣に走るでもなく、自分達を見失わず、淡々と、いい音楽を作ろうとしていた。
 93年のCross road~イノセントワールド、アルバム『Atomic heart』でブレイクし彼らは時代の寵児となり、マスコミにはミスチル現象ともてはやされ、1996年のアルバム『深海』では内省的な世界観も見せた。狂騒の中ツアーと楽曲リリースをこなした後、97年~98年の1年間活動を休止し、その後はどっしり構えた自分達のペースで活動を続けている。

 一般的にミスチルの人気はフロントマンの桜井和寿のキャラクターに負う所が大きい。内省的な歌詞、繊細なメロディーライン、独特の声、高い歌唱力、醤油顔のいい男。桜井さんとJENが下品に突っ走るのを寡黙な田原君とナカケーが大人しく見守っているというチームバランスもいい。ジャンルにこだわらず、電子音楽やジャズの要素を取り入れたりする雑食性や適度な新奇性追求も、活力の維持に寄与しているのかもしれない。

 で、ミスチル独自の魅力。それは一言で言うと「誠実さ」であると思う。恋愛感情も人生の切実な問題も、その純粋な形で、原体験の風味を損なわぬよう、ありのままに提示しようとする姿勢。悩んでいる姿を晒し、下品な欲望を認め、その上で最善の在り方を模索する求道者としての態度。自分の言葉で語り、心に浮かんだ切実なメロディーを奏でる。誠実さとか、ひたむきさとか、中庸とか。日本人が歴史的に育んできた美徳を、日常的に抱いている皮膚感覚を、大切にする姿勢がそこにはある。不特定多数の人々が日常の中で感じる寂しさや、悩みに対する答えがそこにあるのだ。その普通の感じの良さの中に。

 2012年5月のデビュー20周年の記念ライブPOP SAURUS 2012のBDを昨日鑑賞していた。静かにゆらめく炎みたいな、揺るぎない姿勢。やっぱり好きだなあ、と思った。
   

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