2021年1月26日火曜日

太陽の帝国(映画)


 イギリス人の少年が第二次世界大戦下の上海で過ごした日々を描く映画。スティーブン・スピルバーグ監督。1987年作品。

 原作はSF作家であるJ・G・バラッドで、ストーリーは作者の実体験に基づく。上海に滞在していたイギリス人の少年(クリスチャン・ベール)が、日本軍の侵攻による混乱の中で両親と生き別れ、その後、過ごした日々を描く。

 アカデミー賞の受賞はならなかったようだが、全体に当時の雰囲気の再現度が高く、玄人向けの歴史物という感がある。上海を占領する日本人は日本人が演じており、観ていて違和感がないのが好感が持てる。戦時の生活の過酷さ、悲惨な境遇で生きる人間の醜さと美しさなどが、過剰な修飾をせずに描かれている。

 スピルバーグは迷子の物語を描き続ける監督だ、と伊藤計劃が論じていた記憶があるが、本作がまさしくそうである。『レディプレーヤー1』や『ジュラシックパーク』などの娯楽作品を作る一方で、『プライベートライアン』や『シンドラーのリスト』などのシリアスな戦争映画を作るスピルバーグの二面性は興味深い。深い悲しみを知り、大衆娯楽の作品に昇華させる手腕を見るにつけ、創造的に生きる人間の完成形という気がしてくる。

 本作には近代史を学ぶ教材として食指が伸びたわけだが、期待通りなかなかよかった。多くの人に受けるかはともかく、テーマと世界観がいい。次は原作を読みたい。
   

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