2020年7月12日日曜日

レディ・プレイヤー1


 スティーブン・スピルバーグ監督。2018年のアメリカ映画。

 舞台は2045年。現実世界は荒廃し、人々はコンピューターネットワーク上の仮想空間でのアバターに己を投影し、ネットゲームの世界に生き甲斐を見出していた。そんなネットゲームの世界に製作者が隠した宝を求めて、パッとしない現実世界での生活を送る主人公らが、組織的に攻略を目論む悪徳企業と争いながら冒険する。

 思い出したのは『シュガーラッシュ』と『ハンターハンター』のグリードアイランド。それ以外にも無数にあるゲームの世界に人が入る系の物語を、最新の技術を用いて映像化するとこうなるということだろう。社会の格差が進行し、困窮した人々がネットゲームの世界で現実逃避する、というのは現代社会の延長線上あるものとして全く違和感がない。むしろ、そんな世界はすでに存在しているだろう。世相は思いっきり反映している。

 特筆すべきはディテールの再現度。『シャイニング』の館の冒険など、往年の映画の元ネタを知っている人がニヤリとさせられるネタが随所に込められている。とりわけ、アメリカと日本のポップカルチャーへの愛情が溢れており、アキラ、キングコング、ストⅡ、ターミネーター、ガンダム、など小ネタは膨大にありすぎて、枚挙に暇がない。

 2000年以前のオタク文化を、2000年以降のネット社会の感性で再構築し、アメリカ娯楽映画の文法に落とし込んだ、というのが本作の構造の本質なのではないかと思う。一つの異世界を徹底して作り込むのが2000年以前の創作であり、テクノロジーを用いて過去の名作群をサンプリングするという発想はネット社会の2000年以降の感性である。結果としてできた作品は多層的であり、大人も子供も楽しめるファミリームービーとなっている。アメリカ娯楽映画の昔と今を繋いでいる感がある。

 ちなみに、週に2回くらいはゲームから離れましょう、というのが本作におけるもっとも重要なメッセージである(ネタバレではない…と思う)。
   

0 件のコメント:

コメントを投稿

ブログ アーカイブ