2020年4月27日月曜日

都市と都市


 英国の小説家チャイナ・ミエヴィル著。2009年作品。

 東ヨーロッパのバルカン半島に、ベジェルとウル・コーマという二つの都市国家が、同時に同じに場所に存在するという設定。互いの街の人間は交流を禁じられ、互いに見て見ぬ振りをする独特のルールが厳格に実施されている。そんな場所である日、変死体が発見される。所轄の刑事である主人公のティアドール・ボルル警部補は、その捜査を開始し、次第にトラブルに巻き込まれ…というのが筋。

 <ブリーチ>、<クロスハッチ>などの独特の表現が多く、最初は面食らうが、世界観が次第に見えてきて、慣れてくるとグイグイ読める。古典的な刑事物、ミステリー物の空気感を大事にしつつ、特異な設定の部分が後半に進むほど生きてくる。世界観の構築や登場人物の掛け合いなど、全体に質が高いので、異質の世界の冒険にどっぷりと浸れる。小説を読むことの原初の喜びを味わえる。

 ディック-カフカ的異世界を構築し、ヒューゴー賞、世界幻想文学大賞をはじめ、SF/ファンタジイ主要各賞を独占した驚愕の小説…とハヤカワ文庫の背表紙の解説に書いてあるが、だいたいその通りである。期待は裏切らない。
   

2020年4月26日日曜日

プロ棋士の思考術 大局観と判断力


 碁打ちの思考経路とはどのようなものか、と考え、タイトルのみを見て衝動買いした本。買ったのは電子書籍版だが、底本の書籍は2008年発売。

 作者の依田紀基氏は、1970年生まれ、北海道の岩見沢市出身。10代でプロデビューした俊才であったが、若くして女やギャンブルに溺れ、おおいに人生を寄り道している。これを書いている2020年4月現在でも現役だが、twitter上で日本棋院の執行部を批難したことが問題視され、6ヶ月間の公式戦禁止処分を受けている。容姿は強面だが、精神にも自由さが残っているのか。無頼で磊落なようで、それでいて繊細な感性が内には同居する。厳しい勝負の世界で生き続ける、強き者のメンタリティが彼には学べる。

 本書では彼の生活史や、囲碁観、人生観が語られる。ある種のステレオタイプな構成ではあるが、一つの道に徹して生きた人間の含蓄がある。囲碁で勝ち続けるための8つのK(感動、繰り返し、根本から考える、工夫を加える、感謝、健康、根気、虚仮の一念)などは、あらゆる道に通じる。バスケでも、精神医学でもそうだろう。

 気張らず買って、読んで良かったと思える本。シンプルな良著。
   

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