2013年3月16日土曜日

スローターハウス5



 第二次世界大戦時のドレスデンの焼夷弾爆撃を経験した作者の半自伝。ただし脳に傷を持ち、自分の人生を自由に時間旅行できる主人公の体験という形式で語られる。

 内容は滑稽で悲惨。その一言に尽きる。時系列は細断され、妄想が混ざりつつランダムに配置される構成。不格好で、お人好しで、悪運に恵まれたアメリカ人ビリー=ピルグリムのささやかな幸福と悲哀。その目に映った無慈悲で、不条理な、大量殺戮の記憶。タイトルはナチの捕虜収容所だった屠殺場に由来する。

 あまりに強烈な体験を物語にする方法はこのような形以外になかった、と作中で筆者は語る。作中で連呼される"そういうものだ。"=So it goes)に至るまでに捨象された幾つもの命の息吹。その喪失に際して表出される病的なまでの欠落と冷淡が、一個人には対処不能なほどの凄惨さを物語る。

 諦観漂う道化の底には、果てしない思弁と深い慈悲を感じる。
 この人の本をもっと読みたいと思った。
 カート・ヴォネガットの爺さん。
   

2013年3月3日日曜日

Che Guevara


もし我々が空想家のようだと言われるならば、 
救い難い理想主義者と言われるならば、 
出来もしないことを考えていると言われるならば、 
 何千回でも答えよう、「その通りだ」と。 



・・・


  キューバ革命の指導者で医師。深い人間愛と冷徹な理性、揺るがない情熱が同居する男。人間味溢れる性格とロマンに満ちた革命家としての生涯は普遍的な魅力を放つ。ジョン・レノン曰く「世界で一番格好良い男」。ジャン=ポール・サルトル曰く「20世紀で最も完璧な人間」。

 1928年、アルゼンチンの富裕な弁護士一家に彼は生まれた。喘息持ちであったが青年時代はラグビーなどの激しいスポーツを好んだ。女と葉巻を愛し、旅と写真を趣味に持つ。読書好きの日記魔でもあった。

 ブエノスアイレス大学の医学部の在学中に幾度も近隣諸国をバイクで放浪し、南米中を自分の目で見て知ったのは先進国に搾取され踏みにじられた原住民の貧困と悲惨。28歳の時にメキシコでカストロと出逢い、従軍医としてキューバの革命闘争に身を投じた。革命後、工業大臣や国立銀行総裁などを務めながら外遊し、 国の指導者として新生キューバの国家システム構築に尽力したが、地位に安住することはなく、その後は再び革命戦士として生きる道を選んだ。

 39歳でボリビアで銃殺されるまで、彼の生涯は人間愛と高い理想に貫かれた。寡黙だが、よく勉強し、よく働く。人生を楽しみ、愛する者のために命を賭して戦う。 医師として、革命家として、最後の瞬間までその理想を追求した。

 現在キューバの医療はその無償性と治療内容の質の高さで世界中に名を轟かせる。診療に従事する医師達は高邁な志を抱き、誇りと献身をもって今日も国内外で働いている。人民の救済を夢見た彼の魂は、世界最高の医療システムとして今もキューバに息づいているのである。
       


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