2016年6月24日金曜日

魚舟・獣舟


 今年読んだ小説ではベスト。

 ホラーや伝奇の皮をまとい、その実ハードサイエンスな科学理論を骨格に持つSFの短編小説集。海洋伝奇小説の表題作、日本が舞台のバイオハザードを描く”くさびらの道”、管理社会のディストピアに生きる少年を描く”小鳥の墓”が素晴らしい。妖怪、人工知能などが登場する他の短編も高品質。

 作者の日本語の筆力が高く、『風の谷のナウシカ』で宮崎駿が描いたような体液でぬめぬめして胞子や菌糸を撒き散らす系統の気持ち悪い生き物の描写がうまい。そして、分子生物学や遺伝子工学の理論との融合させることにより、理系の心が熱くなる至高の読書体験が楽しめる。

 面白いSF短編小説を読んでみたい、という人がいたら、まず本作かテッド・チャンを勧めよう。
   

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