2015年8月6日木曜日

日々コウジ中


 副題は「高次脳機能障害の夫と暮らす日常コミック」。
 40代でくも膜下出血を発症し、高次脳機能障害を呈した夫の話。

 日本の文化圏の強みはこういう漫画エッセイが存在することだと思う。ユーモアと日常の感覚を交えて、愛らしい絵とキャラクター達と共にストーリー仕立てで病気の当事者とその周囲の状況や経過を知ることができる。症状や病態、病院での急性期治療からリハビリを経て社会復帰までの流れ、社会福祉サービスの活用法、など当事者が経験する一連の内容を過不足なく、分かりやすく追える。

 実体験を漫画エッセイとして出版するという行為が、障害を負った夫の妻である作者の現実受容のための手段だったんだろう。辛い体験や未来への不安と逃げずに向き合い、事実を再構成することで希望を見出す。物語として語り直すことで作者自身の救いとなり、読み手に届けることで他の誰かの救済への祈りになる。最近読んでいたナラティブ・セラピーの本の内容を思い出した。

 うつ病の『ツレがうつになりまして』、統合失調症の『私の母はビョーキです』と並び、当事者や家族へおすすめできるクオリティ。高次脳機能障害に興味をもった方はまず一読を。きっと全体像が見えるはず。
   

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