話題の中国の巨編SF『三体』三部作の第二部。
日本語版が上下巻で2020年6月に発売。
本シリーズは世界的にベストセラーになっており、各国のSF出版界における「事件」となっている。以下、一応、未読者のためにネタバレをしないように説明する。これは三部作の第二部にあたるが、ここでほぼ完結するので、2021年春に発売予定の日本語版の第三部刊行を待たなくても、今すぐに買って楽しめる。むしろ、この流れに乗るためには、今すぐ買って読むべきであろう。
基本は地球人が異星からの侵略者と戦う話である。第一部が三体人との争いの序章であり、この第二部が実際の対決にあたる。圧倒的な科学力を持つ三体人による侵攻を待つ絶望的な地球での日常、四人の「面壁者」による三体人を打ち負かすための智略戦、などが展開される。大きなストーリーの骨格を維持しつつ、膨大な科学知識、人文科学的知識が披瀝され、予測不可能なドラマに必然性を与える。
これは本年の個人的なベストになると思う。後半(特に「水滴」以降)、個人的には冲方丁『マルドゥック・スクランブル』のカジノシーンを初めて読んだときのような、焦燥感とももに物語世界に引き込まれていき、ページの手を繰る手が止まらなくなる感覚があった。ここで告白しておくと、職場での昼休みに読んでいて、外来業務に支障が出そうになったほどである。そして、最後まで読むと、圧倒的な知的興奮とともに、カタルシスが待っている。「黒暗森林」という語への理解が訪れるともに、現社会におけるその機構のメタファーに思いを馳せることになる。
本作の原版である中国語版は2008年に発行されており、前回も書いたが、中国のエンターテイメントコンテンツのクオリティには恐れ入る。続きの第三部『死神永生』はさらにスケールが大きくなるそう。「大きなSF」を堪能できる幸福よ。本作は人類の宝である。
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