2017年9月1日金曜日

うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち


「つらく苦しいうつトンネルから脱出できた者として、今なお苦しむ人を救わずにはいられない。」

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 職場に置いてあったのでふと手に取って読んだ本。10年近くうつ病に苦しんだ漫画家・田中圭一が、自身の体験とうつ病経験者に取材した内容を書くエッセイ漫画である。

 内容は平易で、医学的な誤謬も特になく好感が持てる。心理学的、社会学的な要因の検討が多いが、そこは非医療者としての分をわきまえ、あくまで一般人として(医学の素人として)、自分のパーソナルな言葉で語ろうとする謙虚さや誠実さが一貫している。本書が提供する視覚的なイメージ(トンネル、アメーバ上の生物、黒い歯車など)やナラティブな経験談(17人の個人的なストーリー)を、科学知識に基づく適切な医学的治療と組み合わせることで、うつ病の治療のツールとして無類の強さを発揮すると考えられる。

 私を含め、知り合いの複数名の精神科医が推奨しているので、うつ病に興味がある方の入門書としてオススメである。『ツレがうつになりまして』と並ぶ、一般向けのうつ病の啓発書の双璧になるだろう…という気がする。
   

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