夏への扉
時間SFの古典的名作。ロバート・A・ハインラインの1956年の作品。
主人公ダニーは個人的にイメージするのはライブアライブのSF篇のカトゥー(この喩えはどれだけ通じるのか)のような古典SFの典型像の発明オタク。研究以外には無頓着で、異性関係やビジネスライクな駆け引きが苦手で、口下手だが心根は優しい29歳くらいの男を想像する。そんな人のいいオタクが商売仲間と恋人に裏切られ、ヤケ酒と愛猫ピートとの戯れを慰みに、失意の中、30年の冷凍睡眠(コールドスリープ)に身を委ねようとするが、、、という話。
特に日本で人気のタイムトラベルSFだが、一部にプロットを酷評する向きもあり(大森望は好きじゃないらしい)、どんなもんかと思って読んでいたが、まあ、確かに、今よりも単純な時代の娯楽という感じ。従妹のリッキーへの親愛の情や中盤以降の展開は、汚れなき心を持つ純なオタクの理想像としての濃度が高く、ちょっとイケてない気が。
とは言え、冒険あり、謎解きあり、ロマンスあり、王道の展開を確立した古典として読むと割と楽しめる。科学と猫が好きならきっともっと楽しめる。
夏に読もうと思って取っておいた作品だが、夏に読む必然性は全くなかった。
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