2015年3月9日月曜日

故郷から10000光年


 ジェイムズ・ティプトリー・Jrの短編集。
 読んだのは1991年版の伊藤典夫訳。

 訳が古いせいかあまり頭に入ってこない作品が多い。『ハドソン・ベイ毛布よ永遠に』(タイムトラベルとロマンス)、『スイミング・プールが干上がるころ待ってるぜ』(未開の惑星の文化汚染)あたりが分かりやすくて面白かった。多数の異星人との異文化間交流、性的な含みのある描写、ドタバタのコメディタッチなど、(多分)ティプトリー節が冴える作品(『われらなりに、テラよ、奉じるはきみだけ』『セールスマンの誕生』)はあまり趣味に合わなかった。外界の過剰刺激との遭遇を描く『そして目覚めると、わたしは肌寒い丘にいた』は結構好き。

 作者は元CIAの女性で、男性名義で作品を発表していたSF界の伝説。1987年に認知症になった夫をショットガンで射殺後に自殺するという壮絶な最期を遂げたことで知られる。そんな作者の複雑で豊穰な精神世界を覗き見る思いで読むと味わい深い。
   

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