2014年11月11日火曜日

春琴抄


 偏執的な性愛を描く谷崎潤一郎の掌編小説。

 大阪の薬屋の盲の令嬢の春琴と、その丁稚(付き人)の佐助。佐助は主人である春琴の美貌、立ち居振る舞い、三味線のの技術など彼女を構成する全ての要素が宿した美に陶酔していた。食事や移動の手伝いから入浴や排泄の介助まで、一心に、疑うことなく、献身的にその全瞬間を捧げ尽くす。そこに後悔や疑念は微塵も感じられない。そんな狂気の生涯には普遍の美しさが宿る。

 猥雑さと官能が同居し、退廃と嗜虐が美を殊更に引き立てる。これが耽美主義。
   

2 件のコメント:

  1. この頃からヤンデレは存在したのかとつい思ってしまった。

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  2. 互いに害を与えないから疾病性は低めだね。
    偏執的な性愛は普遍的に存在すると思う。

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