2013年4月13日土曜日

GO(小説)



「いつか、俺が国境線を消してやるよ」 

・・・


 自分にとってかなり思い入れのある1冊。

 大学1年生の夏、かなり本格的に友達がいなかった。彼女もいなく、金もなく、かなり頑張って突破した受験のあとに待っていたクソみたいに孤独で退屈で残念な日々に、心の底から萎えていた。

 そんな夏のある日、昔からの知り合いに薦められて読んだこの本。
 金がなかったからブックオフあたりで偶然見つけたのを買った気がする。
 
 在日朝鮮人の男子高校生が恋をする話。
 主人公の杉原は国籍の違いが生む微妙な立ち位置に苛立ち、ウンザリして、己のアイデンティティを探して、戦い、暴れ、考え続ける。巨大な体制に押しつぶされないよう強くなるために、本を読み、勉強し、音楽を聴き、映画を観て、体を鍛え、喧嘩して、恋をする。

 権利ばかりを主張するさもしい乞食根性やいじけた被害者意識はなく、あるのは不条理な社会に対する健全な怒りと、生きる歓びを享受しようとする若い魂が生み出す疾走感。ページを繰る手を止めさせない書き手=ページターナーを目指しているという金城一紀の面目躍如。だいたい誰に勧めても最高に面白いという返事が返ってくる。

 たぶん、大学生活に倦み、心が萎んでいた自分を変えてくれたのはこの1冊だった。

 読むと生きる力が湧いてくる。
 自分が小説を書くなら、こういう話をぜひ書きたいと思っている。
 荒削りで、真剣に無茶苦茶やってる、生きる気力に満ちた若造の快進撃。

 久しぶりに本棚から取り出して本を開くと、思わず引き込まれ、腰を据えて読み返してしまった。この先も何度となく読み返す気がする。

 映画も全盛期の窪塚洋介が最高に格好いい。
    

2 件のコメント:

  1. 処女作だっけ?
    ゾンビーズはかなり面白かったので、いつかこちらも読んでみたいと思っています。

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  2. レボリューションNo3で最初に賞穫ったけど、本になったのはこっちが最初。
    金城一紀の半自伝らしいね。
    こちらもかなり間違いない作品なのでぜひ。映画もいいよ。

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