2021年7月4日日曜日

三体Ⅲ 死神永生


 三体シリーズ三部作のラストを飾る作品。日本語訳は2021年6月発売。上下巻。電子書籍リーダーDolyで読了。

 前作の『三体Ⅱ 黒暗森林』はきれいな終わり方をしたが、その続きはどうなるのか、、、という前作までのファンの期待や不安に、真正面から応える作品である。

 特筆すべきは物語の世界観の深さや広さ。太陽系より外の宇宙との往還や交流にとどまらず、異なる次元とのコンタクトや、異星の文明の社会学などが、精緻な理論と繊細な描写で描かれる。SF的なイマジネーションの限界に挑戦した作品であり、めまいがするような、途方もないスケールの作品である。

 理論物理の議論が頻回に登場するゴリゴリのハードSFであり、途方もないスケールの世界を舞台にしながらも、情緒的な物語として成り立たせていることに本作の特殊性がある。無慈悲な攻撃により人類が幾度となく絶望に晒され、胸が締め付けられるような苦しみと、その後の束の間の解放感を、読んでいて何度も味わう。そして、広大で荒涼とした世界の中で、儚げに光る灯火のような人性や愛慕が、物語作品としての味わいを添える本作の中盤に出てくる作中作の雲天明(ユンティエンミン)のおとぎばなしなんかも最後まで読んでから読み返してみると、より深く味わえる。

 全作を通して、人間の想像力の限界を見せてくれる、素晴らしい作品だった。これぞSFという知的興奮と感動が入り混じる醍醐味を、読んでいてずっと味わえる。もはや人類の宝という感がある。いつかまた読み返したい。
   

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