2018年4月7日土曜日

シン・ゴジラ


 伊藤計劃が観たら、なんと書いただろうか。
 前から気になっていて、やっと観ることができた2016年作品。

 全体の方向性として、国における非常事態という「状況」がメインに描かれる。全編を通して、日本の官邸における官僚らの有事への対応がメインであり、登場人物の会話の随所に、『パトレイバー2』などにみられる押井守系のエッセンス(冷静で理知的な衒学)が色濃く見られる。それに加え、本ブログ筆者には解読できなかったが、軍事的、科学的なオタク知識と遊び心が目一杯詰め込まれているらしい(監督・庵野秀明はオタク界の頂点にいる男だ)。そんなわけで内容は、オタクの楽園、という風情がある。

 あとは、震災の影響が全面に出ている。非常緊急事態に対応する国家の混乱や、市民生活への脅威、放射能による汚染を描くシーンの撮り方や、それらに対する作中での台詞が、2011年の東日本大震災と重なる。震災の5年後という公開のタイミング、今改めて『ゴジラ』を作る意味、それらが符合した必然性を感じる。本作の制作および公開は、日本人があの震災の意味を捉え直し、乗り越えるために必要なためのプロセスだったのではないかとさえ思える。祖国や日本人全体に対する、製作陣の祈りや愛のようなものを感じる。

 作品の根底にあるのは自衛隊や官僚ら、古き良き日本の職業人への讃歌だろうか。昨今、幅を利かせがちな、ちゃらついた、うわついた層ではなく、誇りや責任感を胸に、人知れず寡黙に責務を果たす、職業倫理と侠気を持った燻し銀なプロフェッショナルが活躍する作品である。
 
 そのへんをもろもろ含みつつ、エンターテイメントとして結実し、収入を上げた大変優秀な作品ということだろう。あっぱれだ。
  

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