感想:原作の方が面白い。
火星に一人取り残された宇宙飛行士が生存のために知力体力を尽くす…というアンディ・ウィアー原作のSF小説の映画化。火星の景色やNASAのガジェットの再現など映像は臨場感があり素晴らしい。しかし、弱点は原作の妙味である徹底的な理論構築の過程が割愛されていること。数式やディスカッションは映像化には不向きなんだろうが、カロリー計算やらジャガイモ栽培の方法論やら、物理、化学、情報工学、植物学、栄養学など縦横無尽に操りながら、生存および地球への帰還という解を導くために総動員される科学知識を追いかける知的興奮が味わえないのが残念。
あと、主演のマット・デイモンは個人的にはミスキャスト。原作のイメージとしては、ジム・キャリーレベルの天真爛漫な陽気さが欲しかったところ。寡黙で燻し銀な男の皮肉なジョークは原作とはズレている。
総括として、原作の理論的な説明やイベントを時間軸の関係でいろいろ端折って、アメリカンな娯楽映画に仕立てたという印象。映画も悪くないけど、理系の素地がある人には絶対に原作の小説がオススメ。映画は非理系の人も楽しめるように簡略化されている。
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