2016年1月10日日曜日

神々の山嶺


 山に取り憑かれた男たちを描く話、の漫画化。
 原作は夢枕獏の小説。作画は『孤独のグルメ』の谷口ジロー。

 舞台は主にエベレストに近接するネパールの首都カトマンドゥ。そこで日本人カメラマンの深町が登山用具店で偶然見つけた古いカメラを巡って、消息を絶っていた伝説の登山家の羽生(はぶ)らしき男に出逢う…という導入から始まる。

 作中には1980~1990年代の空気が漂う。男たちは不器用で、真っすぐで、熱いものが胸にある。標高数千mの山々の美しさを備えた峻厳さや、極寒・低酸素などの過酷な状況下での極限状態の描写がよい。蜂蜜入りの紅茶などの食べ物の描写がおいしそうで、筆者はネット上でよく見るそのコマを見て文庫版の購入を決意した。

 説教臭さはなく、淡々と男達の生き様を描く作風が潔くて好感。
 万人向けとは言いがたいが、骨太の人間ドラマが展開される佳作であろう。
    

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