完全な真空
SF界の巨匠スタニスワフ・レムの書いた架空の本の書評集。ボルヘスの『伝奇集』の進化系とも言える。
内容は文系の素養と科学知識を駆使して徹底的に作り込んだ悪ふざけ。基本的にハードで難解な内容が多いが、真面目くさった口調で与太話を展開するのが味わい深い。
冒頭のメタな書評『完全な真空』、ひたすら読者をこきおろす『てめえ』、トゥルーマンショー的な予定調和を生み出す組織の『ビーイング株式会社』が分かりやすくて好きだった。ハイライトとされるノーベル賞受賞学者の架空の講演『新しい宇宙創造説』は難易度が高すぎてよく分からなかった。
インスピレーションの宝庫であり、後世の創作家(ジャンル問わず)へ与えた影響は計り知れないと思われるが、生半可なSF読者が娯楽目的に読もうとすると容易に挫折することが予想される(筆者もそのクチだ)。巨匠のハードな悪ふざけ、ということで教養の書として軽い気持ちで抑えておくのは有益であるように思う。
SF読書歴を積んで、いつかまた読んでみたい。
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