2012年11月17日土曜日

IN RAINBOWS


 radioheadは説明しすぎない。
 難解な歌詞。
 新奇性に満ちた音。
 この作品の「虹」が何を意味しているか、明確な答えは示されない。

 音楽性としてはアコースティックなバンドサウンドとエレクトロニカの融合(らしい)。生の楽器の音と電子音が調和し、耳触りがよい。デビュー当初のアナログなギターサウンドとKID Aのデジタルなシンセサイザーミュージック、両方の極を経て、止揚し、表現はその次のステージにある。

 ここには諦観がある。
 もう、引き返せないところへ迷い込んでしまった男の回顧とぼやきが基調となる。「虹」はきっと、人間の業みたいなもので。螺旋。ループ。誘惑。混沌。陶酔。根源的で、蠱惑的な、妖しげな魅力をたたえた光。

 こっちは本当にファウストが基盤にある。
 ファウスト=理想に燃えた男
 メフィストフェレス=誘惑と堕落を散らつかせる道化じみた悪魔
 #5 FAUST ARPは諦め、惑い、理想の火が消え行く男の独白。
 #10 VIDEOTAPEでは最後の審判の瞬間を前にメフィストフェレスの接近を感じる。

 理想と挫折の果てに踏み込む虹色の迷宮。
 それは、一人の男が今居る場所かもしれないし、人類全体の現在地点かもしれない。
    

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