2019年10月14日月曜日

サ道


 何を思って買ったか自分でも忘れてしまったサウナ入門漫画。既刊2巻。電子書籍Dolyのものを購入。

 絵はユルく、内容も明快で、疲れた頭に優しい。『孤独のグルメ』にも通じるんだが、現代社会を生きる日本人の孤独や疲れに響くものがある。サウナには思考から感覚へ注意をシフトさせる禅的な意味合いがあるのだろう。”Don’t think. Feel.” 的な。

 余裕がなくなってくると、こういう深く考えずに読める漫画が愛しい。
 お疲れの方にぜひ。
   

2019年10月12日土曜日

ベイマックス


 理系オタクたちの活躍を描く、ディズニー名義のピクサー映画。2014年公開。
 
 これは観ていて楽しい、男の子向けの作品。舞台は日本の東京がモデルのサンフランソウキョウという都市。原作はアメコミらしく、意図的なのか考証不足なのか少しズレた日本の空気が全編を覆う。ディズニー映画としては異色で、ピクサーとの融合による化学反応を感じる。

 ストーリーは特殊能力バトルもので、途中飽きさせず、面白く、感動する。私は最近ピクサー作品のプロットが模範的すぎて逆に物足りなさを感じているが、普通に素直な気持ちで観れば多くの人の心に残る名作であろう。説教臭さはあまりなく、人類愛と科学へのワクワク感が溢れている。とりわけgeek(ギーク)な科学オタクたちへの愛がある。

 しかし完璧だなピクサー映画。人類史上最高峰のクリエイター集団なのは疑いないだろう。
 

2019年10月5日土曜日

シュガー・ラッシュ:オンライン


 『シュガーラッシュ』の続編。自身が所属するゲームの危機を救うため、ラルフとヴァネロペがインターネットの世界へ。2018年作品。

 ディテールは優秀、プロットは今ひとつ。ストーリーとして破綻していることはないのだが、後半に進むに連れラルフの株が下がる。インターネットにまつわる様々な概念を可視化および戯画化した表現や、歴代のディズニープリンセスの扱いは秀逸。子供向けのコミカルなノリを維持しつつ、メタな大人向けを沢山仕込んでいる。

 なんだかんだ、観ていて面白い娯楽作品ではあると思う。ただ、別にシュガーラッシュの延長でやらなくてもよい話だった気がする。インターネットへの理解が深まり、過去の作品へのリスペクトがあり、世界の事象への愛がある。ディズニーとピクサーがすごいのは間違いない。
  

2019年9月14日土曜日

絶滅危惧種の遺言


 ネットのニュースで安部譲二の訃報を知り、wikipediaでその生涯を読んで興味を持って電子書籍Dolyで買ったエッセイ。2006年~2008年に連載されていたのをまとめたものらしい。文庫版の刊行は2009年。

 内容は、昭和の日本を生きた古き良き「悪い人」の回想。きっと詳細を書けない部分が多く、誇張も多分に含まれているんだろうが、それにしてもその生き様が凄まじい。読書家で優秀だった中学生が高校で不良になり、暴力団に入り、逮捕されたり銃で撃たれたりしながら、度胸とハッタリで日本航空のパーサーになったり、ヴェトナム戦争末期のサイゴンで商談したり、世界中を旅して、幾多の死線をくぐり抜け、生き抜いていく。

 私はどうも、こういう、一人の人間の可能性の限界に挑戦するような無茶苦茶な人間が好きらしい。フランク・アバグネイルの『世界をだました男』を思い出した。その軌跡を追いながら、自分の心の枷が壊され、精神の自由を手に入れるような体験が得られる。何より、単純に読んでいて楽しい。

 こんな無茶苦茶をしながら82歳まで生きたなんて、男として見上げたものがある。格好いいっす。合掌。
   

2019年8月10日土曜日

最高裁に告ぐ


 ”白ブリーフ判事”として有名になった現職の裁判官・岡口基一による最高裁判所との戦いの記録。2019年3月刊行。

 岡口氏は長年にわたり積極的にTwitterによる情報発信を行っていたが、その内容により裁判官としての「品位を辱める行状」があったとして、最高裁判所の分限裁判(裁判官を処罰する制度)に申し立てられた。しかしその手続き内容と論旨に法曹として納得がいかず、その不備を広く国民に知らしめ、裁判所批判の端緒にすべく執筆されたのが本書である…と思う。

 基本的にプロの法曹の手による格調高い司法関連の書籍のような文体なのだが、その内容のくだらなさがだいぶ笑える。これは狙っていると思う。岡口氏はTwitter上で白ブリーフ一丁の画像を晒し一躍有名人になった人物であるが、その奇行に似つかわしくなく、裁判官としての評価が高い人物でもある(高等裁判所の判事になっていることからも実績や能力が窺えよう)。人間くさい下品さと諧謔精神を持ち合わせながらも、科学性・合理性を重視する冷徹な論理的思考を持つ人物であることは、本書の随所からもうかがえる。そして彼は、その明晰なロジックで、現在の最高裁判所の凋落ぶりを暴き出し、嘆き、糾弾する。

 正直、岡口氏の表現活動の下品さは、贔屓目に見ても裁判官という職業の品位を辱めていることには間違いなく、不快感を感じる人が多数いることは理解できる(私もだ)。だがそれでも、彼はいいことを沢山言っているのもまた間違いのないことである。国民は、裁判所により意図的に作り出された「高潔な裁判官という人間像」によらず、適正な手続きと確実な根拠によって導き出された論旨により、判決を判断すべきである。それを気づかせるために、岡口氏は体を張って戦っているのである。

・・・

 そして、国民は、少なくとも、「秘密のベールに包まれた裁判官は信頼できる」という古代的な発想はもたないようにすべきである。しっかりと手続保証をした訴訟指揮をして、科学的・合理的な判決理由を示すことができる裁判官であれば、たとえ、オフの生活での人間くささが丸わかりになっていてもまったく構わないはずである。
 本書p192 第Ⅳ部 「司法の民主的コントロール」は可能か? より

    

2019年8月7日水曜日

剣樹抄


 冲方丁の時代小説。単行本は2019年7月発売。電子書籍リーダーDolyにて読了。

 世界史上の三大火事にも数えられるとという江戸時代の明暦の大火(西暦1657年)から物語が始まる。主人公である無宿人の孤児・六維了助(むい りょうすけ)の成長物語であるとともに、『光圀伝』に登場する若き豪傑・水戸光圀(みと みつくに)が重要な役どころとして登場する。

 筋としては、幕府の命を受けた光圀や中山勘解由らが、捨て子を拾って組織した隠密組織の拾人衆(じゅうにんしゅう)とともに、江戸の火付け盗賊の集団との戦いを描く。作者の冲方丁がトークショーで「大江戸シュピーゲル」と評していたという噂だが、そういわれると実際その通りだと腑に落ちる。シュピーゲルシリーズと同じく、傷を負った子供達が戦いの中で過去を克服し、より実存的な生に目覚め、社会に戻っていく話、である。

 作者がこれまでの作品で育み、培ってきた知識や技巧を融合させるとこうなるのであろうと考えると納得。司馬遼太郎を彷彿とさせる、江戸の文化風俗や史実に関するトリビアの紹介が混ざるあたり新境地だろうか。続編に期待。
   

2019年8月4日日曜日

リメンバー・ミー


 Disney THEATERにて鑑賞その3。音楽家に憧れるメキシコの少年が死後の国を冒険する話。2017年。ピクサー名義、ディズニー配給の作品(ほぼ同じ会社だが名義で微妙に違う)。

 テーマとしては、伊藤計劃の『メタルギアソリッド ガンズオブザパトリオット』を思い出したが、「人が他者の物語を語り継ぐことの意味」みたいなものだと思う。人は肉体的に一度死に、存在を忘れられることで二度死ぬ。その悲しさを知っているから、民衆は死者の写真を飾り、物語を語り継ぐ。

 そしてビジュアル面、妖しげで壮麗な死後の国の世界観がいい。主人公の少年ミゲルが暮らす街、死後の世界の色彩豊かな住居、そこに住まう人々の息づかい、どこをとってもメキシコらしい空気感が漂う。金銭的な豊かさはなくとも、魂の安楽に必要なのは音楽と家族。そんな価値観もまたメキシカン。

 脚本はこれまた優等生。伏線の回収やミスリードなど、技巧的に見事すぎて逆に物足りなさが…と感じてしまう私はひねくれ者なのかもしれないが、特に文句のつけようながない一級品の出来である。ピクサーの安定感と凄みを感じる。そりゃアカデミー賞もとりますわ、と。
   

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