ロバート・デニーロ主演、マーティン・スコセッシ監督の1976年映画。
20歳くらいの頃に初めて観たときにはよくわからなかったが、この年になって改めて観ると、前よりも内容を理解することができた。これは心が壊れてしまった人間の物語であり、主人公のトラヴィスの不眠症や、他者と話すときに生じる奇妙な間、冗談や感情の機微を共有できないラポール(疎通性)のなさが、すでに機能不全に至った精神のありようを表している。女性や同僚への振る舞いから察するに、もともとは悪い人ではないのに、人間性を喪失した亡霊のような存在となって男は都会の夜を彷徨い続ける。
心的外傷の原因となった戦争の描写は全くないのに、行動や立ち居振る舞いに残るその痕跡のみを提示することで魂の暗部を描き出している。きっとそういう映画なんだろうと思う。
0 件のコメント:
コメントを投稿