2016年8月28日日曜日

冲方丁のこち留 こちら渋谷警察署留置場


 2015年衝撃のニュースだった「冲方丁 妻への暴行で逮捕」の件で9日間の警察署の留置所生活を送った作者本人による渾身の手記。発売当日に一気読み。

 結局、不起訴で釈放(≒無実が認められた)になるわけだが、その過程で作者が体験した日本の警察、検察、裁判所からなる司法システムの不条理を糾弾する。というか、不条理や理不尽を通りこしてもはや「喜劇」であり、作者は「こりゃもう笑うしかない」と断じる。真意は本書を参照してほしいが、巻末で周防正行(痴漢冤罪の映画『それでも僕はやってない』の監督)とも対談で話している通り、大変イケてない現代日本の司法の実態が分かる。西原理恵子ばりに国家権力に喧嘩を売った作品であり、その反骨精神むき出しなクリエイターとしての態度には清々しいものがある。

 本書を読んでいると体裁と保身ばかりで人間味が足りない俗物が世の中を駄目にするということがよく分かる。ユーモアの視点というのは批評精神の最たるもんなんだろう。筆者は岡口基一氏のような裁判官(白ブリーフのTwitterで有名になった人)のような人間に期待する。つまんねーやつじゃ駄目だってこと。

 とりあえず、マルドゥックシュピーゲルの最終章が読めることに安心した人が沢山いるはず。タフな異形の作家として、氏には行けるとこまで行ってほしい。
   
   

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