2016年11月2日水曜日

真実 新聞が警察に跪いた日


 新聞社と警察の腐敗を暴く元記者のノンフィクション。

 今年は警察の不正関係の本(参照 その1その2)を読むことが多かったが、これも中々。北海道新聞社(道新)の元記者らが中心となって2003年から2005年にかけて調査報道した北海道警察(道警)の裏金問題と、それに対する報復の話。

 警察、新聞社いずれの側も、個人を潰す組織の論理は残酷で、狡猾で、知るほどに暗澹とした気持ちになる。作者は「(組織人ではなく個人としての)悪人はどこにもいない」と考える場面があるが、本当にそうなのかもしれない。ここでも『ルシファー・エフェクト』、すなわち、個人が集団に帰属することで悪へと傾く普遍の原理が働く。役職と組織の名で加担者を没個性化して罪悪感を軽減し、集団への帰属を強化させ、傍観者は黙認する、ということ。

 たぶん、この本のようにありのままの事実を書籍化し、世間の日の目を当てさせる、というのが一つの正解なんだろう。組織の闇に巣食う嫌気性の怪物を倒すためには、光を照射すべきなんだろう。このような裏金作りや恫喝などの悪事は、インターネットの登場により露呈しやすくなったが、昔はやり放題だったんだろうなと思い知らされる。

 組織と戦う個人への教訓のテキストとして、本書は普遍の価値を持つだろう。
   

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