2016年5月20日金曜日

春の雪


 三島由紀夫の代表作の一つ。明治の貴族の悲恋の話。

 侯爵の父を持つ華族の家柄に生まれ、生まれながらの美貌を持ち、倦怠と傲慢を抱えて生きる18歳の青年である松枝清顕(まつがえ きよあき)が主人公。幼馴染みである女(聡子)と互いに複雑な想いを抱いていたが、聡子が皇族と婚姻関係を結ぶことになり…というのが筋。

 圧巻なのは日本語の美しさ。繊細で、重厚で、華がある。会話や生活様式など、明治の貴族階級が生きた時代の一つの記録となっている。こういう文学をじっくり読むと日本語の力が間違いなく上がるだろう。純粋な日本語で構築された物語世界は絢爛で、豊穰で、濃厚である。日本語の文化圏を発展させ、後世にミームを伝えていく、まさしく国の宝である。

 基本的に清顕は性格のひん曲がったナルシストだが、後世の様々な作品の登場人物に影響を与えた鋳型となっているような印象。本作品は1965年の発表で、その後の少女漫画に出てくる性格の悪い王子様のキャラクターの典型像であるように思う(『花より男子』の花沢類と道明寺を足したような感じ)。儚さと退廃的なムードをたたえ、純粋な悪に近いがゆえに美しさが際立つ。

 本作品は『豊穰の海』4部作の1作目である。独立した作品としての読後感も十分だが、続きもそのうち読んでみたい。豊かな気持ちになる。
  

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