2016年5月2日月曜日

セブン・イヤーズ・イン・チベット


 オーストリア人の登山家がチベットに辿り着き、若きダライ・ラマ14世と過ごす話。原作は実在の登山家ハインリヒ・ハラーの手記。1997年の作品。

 第二次世界大戦中の世界情勢など歴史的な背景を舞台装置としつつ、主題には西洋的価値観(上昇志向、傲岸不遜、対他配慮の欠如)のもとで人生に立ち行かず傷ついた若者が仏教的世界に出逢うことで救済と成熟を得るという東洋哲学への憧れが見て取れる。ビートルズ然り、ジョブズ然り、『食べて、祈って、恋をして』然り、西洋人の辿りがちな転帰のちょっとしたステレオタイプではあるが、20世紀の後半には多くの欧米人がオリエンタルな世界の中に神秘と救済の可能性を見出したんだろう。

 映画としては、登山ルックの若きブラッド・ピットの佇まいが最高に格好いい。『神々の山嶺』で読んだようなヒマラヤ山脈の峻厳な高山地帯の映像もいい。泥と埃にまみれた街に生きるアジア人と、金髪碧眼の白人のコントラストが象徴的。受賞と無縁なのは中国共産党に関係者がビビったからか(ブラピは中国に無期限入国禁止になったらしい)。

 高校生の時に1度観た映画だったが、全然覚えていなかった。当時は深く意味を理解できなかったんだろう。チベット弾圧の歴史を知り、結婚などのライフイベントを経てから観ると、胸に響き、残るものがある。30代で観ると楽しめる映画と思われる。
    

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