2016年1月12日火曜日

健康で文化的な最低限度の生活


 生活保護の漫画。
 内容はマイルドな『ウシジマくん』。

 区役所の生活課の調査員になった新米の主人公が生活保護受給者の生活の実態を見て、悩み、奮闘し、成長する。『ブラックジャックによろしく』しかり、『め組の大吾』しかり、このパターンを活用すれば漫画は無限に描けるという定型といえよう。変な奴を新人に据えれば、だいたい何を描いてもドラマが生まれる。

 法律や制度についての説明は詳しく、(たぶん)周到な取材に基づいて書いているんだろうが、精神医学の専門家として、2巻前半のシングルマザーの診断の「PTSD+うつ病」は納得いかない。安売りしがちな診断名で、生活保護受給のため便宜上記載することが多い実情は理解できるが、そこは問題提起してほしかった。あれ病気じゃなくね?

 あとは美形な奴ばっか出てくるのが難点。水木しげる先生や漫☆画太郎先生なみに容赦ない醜さで描けば俄然鬼気迫るものとなり歴史的傑作になりえただろう。清潔感のある絵柄で困窮した生活を描いた所で「意識高い人ぶって社会問題悩んでるふりしてんじゃねーよ!」という想いが脳裏をかすめる。筆者だけか?

 …などと文句を書いてみたが、たぶん続きは買うだろう。
 生活保護の勉強になるし。こういうニッチな作品があるのが日本の文化圏の強みだ。
 存在自体が有益な漫画ではあるだろう。
   

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