2015年8月15日土曜日

海辺のカフカ


 15歳の少年が家出する話。

 全編を通し、神話っぽい不条理さがある。『世界の終わりと~』で確立した(作者が味をしめた)二つの物語が交差する手法をとっている。ナカタさんのパートに出てくるジョニー・ウォーカーは皮剝ぎボリスに通じるものがある。残虐無比で暗い情熱を持った悪の象徴。図書館の司書・大島さんの「うつろな連中」あたりの考察もいい。

 わけのわからん話だが、小説の構成要素に思いを巡らせ、ストーリー展開に込められた意図を想像しながら読み進めると、読んでいて楽しかった。15歳の時に読んでも分からん気がするが、30近い今なら分かる気がする。これは少年が自身の闇と向き合い、痛みを伴って成長するイニシエーション(通過儀礼)の物語だ。なかなかいい感じだ。一人でしばらく筋トレと読書と音楽鑑賞をして暮したくなった。

 『ねじまき鳥』と並び好きな作品になった。
    

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