2015年8月11日火曜日

誰も懲りない


 虐待を受ける女の子と、その家族を描いた漫画。

 登場人物の屈折の仕方が妙にリアルで、細かな台詞や行動に違和感がない。創作の部分も大きいようだが、ネット上の情報によると、作者の実体験を交えているよう。現代社会のどこか目に見えない所に存在する心理的虐待の連鎖。タイトルの「誰も懲りない」が主題を言い当てている。業の深い人間達が、傷つけ合い、慰め合い、攻撃と欲望への逃避を繰り返す。その渦中には、この世の地獄を味わう高濃度の特異点がある。それが主人公の人生。

 こういう胸糞悪い物語は何のために存在するか。その生々しさが現実味を帯びる程、同様の体験を経た者にとっての救いになる。精神科医や心理士の想像力を補完し、診療におけるパフォーマンスを高める。事実を再構成して語り直すことで作者が救われようと試みている(ナラティブ・セラピー)。

 パーソナリティ障害が生まれる過程を学べる。その痛みの物語を。
   

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