2016年12月31日土曜日

narrative of the year 2016


1位 殺人犯はそこにいる(ノンフィクション)
 今年は警察や司法の闇に関連した本をいくつか読んだが、これは最高峰。ていうか怖すぎ。

2位 ガープの世界(小説)
 ハイクオリティな長編小説。個人的な好みにジャストミート。

3位 わたしの日々(エッセイ漫画)
 理想の人生像がこの本を読んでだいぶ変わった。

4位 父と息子のフィルムクラブ(ノンフィクション)
 ブログをやっているのはこういう父親になりたいから。

 学問領域として個人的に外せない。市井の人々の物語を想像すると胸に迫る。

6位 魚舟・獣舟(小説)
 よくできた虚構の物語として。教訓とか期待せず読むのが吉。

7位 ゆとりですがなにか(ドラマ)
 当直中に観るのが楽しみだった。
 
 一作選ぶならこれ。

9位 斬(小説)
 骨太な歴史物が好きになりつつある。これも歳か。

10位 ディパーテッド(映画)
 悪漢の出る映画が好き。
   

2016年12月30日金曜日

映画クレヨンしんちゃんシリーズのまとめ


☆★おすすめランキング★☆

8位 スパイ大作戦(2011年)
9位 ブタのヒヅメ(1998年)
10位 カスカベ野生王国(2009年)
12位 サボテン大襲撃(2015年)
16位 ハイグレ魔王(1993年)
18位 歌うケツだけ爆弾(2007年)
19位 雲黒斎の野望(1995年)
20位 暗黒タマタマ(1997年)
21位 宇宙のプリンセス(2012年)
22位 金矛の勇者(2008年)
24位 踊れアミーゴ(2006年)



 シリーズを通して、基本は大人も子供も楽しめるファミリームービーであり、家族皆で楽しめる娯楽作品となっている。大人に寄り過ぎたり、子供に向き過ぎたり、横着して雑になったり、いろいろあるが、基本は安心して笑えるおバカで楽しい娯楽映画である。

 大人(30代~40代くらいを想定)が楽しいのはアッパレ戦国、オトナ帝国、ロボとーちゃん。子供が好きそうなのは嵐を呼ぶジャングルとかケツだけ爆弾。世界観の作り込みなど総合力ではヘンダーランド、カスカベボーイズ、超時空オラの花嫁あたりが強い。13作目(3分ポッキリ)から16作目(金矛の勇者)は暗黒時代なので、お勧めしない。

 筆者の個人的な考察として、何度か書いたが『クレヨンしんちゃん』という作品の本質は「抑圧された日本人のための娯楽」だと思う。下品で正直で自由なしんのすけは、親や学校や会社に抑圧されている人々のオルターエゴである。欲望と衝動のままに振る舞い、性の解放や諧謔(ユーモア)による社会風刺を顕現することで、真面目で窮屈な日本人の抑圧された魂を救済している。つまり、本シリーズの真の主人公は風間くんである(『ファイトクラブ』と同じ構造)。劇場版の扱いを見れば分かる。

 そして、クオリティのばらつき。ヒットを重ね、長寿シリーズになると共に、ネタの使い回しなどダメな部分が出てくるのが目に付く。産業化されて情熱がなくなったロック音楽に似ているというか、映像技術が高なる一方で内容が昔のヒット作の焼き直しばかりになりがちなアニメやゲームの業界に近いというか。商業化が製作陣の心を失わせ、良質な物語をダメにする産業構造が垣間見える。しかし、しばしば製作陣が奮起して復活するのは特筆に値する。『ロボとーちゃん』とかマジでビビる。そうした商売魂と制作魂の対立によって生まれるダイナミズムを意識すると、シリーズ鑑賞を一層楽しめるように思う。

 あとは、条件の変化と適応。ぶりぶりざえもんの声優が2002年に事故で急逝したため、以降の作品では声を聞けない。最高レベルに面白い素材だったのに惜しまれる。2009年には原作者、2016年には園長先生の声優が逝去している。原作者の登場など初期の定番ネタが封印されたりしつつ、新たな要素を取り入れては進化を続けているのが好ましい。それは2016年末時点の今も現在進行形で続いている。

 現存する24作品を全部観てみて、割と有意義な体験だったと満足。
 いつか誰かと酒の席で語り合いたいもんだ。
   

映画クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃


 24作目。2016年作品。夢の世界の冒険。
 AmazonビデオにないためDVDを借りて鑑賞。

 これは良作。映像的に非日常な祭り感があり、ストーリーの深みも程よい。家族で観た唯一の作品だが、3歳の娘が飽きずに観続けられる一方で、大人が観ていても退屈しないあたりに凄味を感じる。笑い、バトル、人間ドラマがバランス良く配置され、ファミリームービーとして全体の仕上がりが丁度いい。

 これで全作コンプリート。楽しかったな。
     

2016年12月29日木曜日

映画クレヨンしんちゃん オラの引越し物語~サボテン大襲撃~


 23作目。2015年作品。メキシコ・パニック・ムービー。

 いきなりヒロシがメキシコ支社に転勤になるところから物語が始まる。序盤は野原家の引っ越し、中盤以降は人食いサボテンが町を襲うパニックムービーになる。

 『踊れアミーゴ』の改良版という感じで、異国情緒あり、ホラー要素あり、観賞後はカタルシスありで観ていて楽しい。伏線の仕込みなど構成がうまく、恐怖と笑いのサジ加減もちょうどいい。深い感動やテーマがあるわけではないが、娯楽作品として良作だと思う。

 あとは…クレヨンしんちゃんの裏設定というか、真の主人公は風間くんだと思った。『ファイトクラブ』でいうところのタイラー・ダーデンがしんのすけにあたる。日本中の優等生を強要されている子供達にとってのオルターエゴなんだろう。下品で自然体な立ち居振る舞いが、己を押し殺して生きる彼らに救済を与えている。
   

2016年12月28日水曜日

映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん


 22作目。2014年作品。父がある日、機械になるという話。

 「いや、それはねーだろ(笑)」とタイトルとポスターを見るだけでツッコミたくなるが、中身も製作陣の悪ノリが過ぎて、観ていてニヤニヤが止まらない。日常の中で違和感全開のロボット描写をしてふざけつつも、父親のアイデンティティを問う内容であり、軽くグレッグ・イーガン路線でSFファンの嗜好をくすぐる。要所要所で見せるロボとーちゃんとみさえの表情が繊細な心の機微を描き、胸を打つ。

 完全に色モノだが、これはかなりの傑作。親世代にはたまらない作品。
   

映画クレヨンしんちゃん バカうまっ!B級グルメサバイバル!!


 21作目。2013年作品。B級グルメ食べに行ったら敵に追われる。

 これまたイマイチ。作風は『嵐を呼ぶジャングル』に近く、分かりやすい冒険活劇で小学生くらいの子供を標的にしている感じ。デジタルな技術を使うとテンポが悪くなるのか、これまた間がなんだか変。会話劇やアクションシーンは精彩を欠き、いまいち笑いや感動のツボに来ない。小学生向けの作品としては及第点だが、もっと面白くできる素材だったと思えるのに残念。

 続けて観ているせいか、5歳児の友情、家族愛、敵を倒す方法など、定番の型を使い回す感じがやはり興醒め。新しいものを見せてほしいと思うのはスレた大人のワガママなのか。映画としてもB級かな。
   

2016年12月27日火曜日

経済政策で人は死ぬか? 公衆衛生学から見た不況対策



 結論:死ぬよ。

 経済的不況に見舞われた時、国は財政緊縮策(健康保険、失業者支援、住宅補助などの政府支出を減らす)か財政刺激策(上記の社会的セーフティネットに積極的に予算を配分する)のいずれかを選び、危機を乗り切ろうとする。そこで前者の財政緊縮を選ぶと人が死にまくり、経済も伸び悩む、というのが作者の主張。主に1929年~2012年の各国データを基に事例を挙げながら経済政策と公衆衛生の関連を論証していく。

 事例は1929年の大恐慌後のアメリカのニューディール政策、1991年のソ連崩壊後の急速な市場経済への移行、1997年のアジア通貨危機後の東南アジア、2007年のアメリカのサブプライムローンの破綻に端を発する世界同時不況下でのギリシア、アメリカ、イギリス、アイスランド、スウェーデンの動向など。疫学的なデータや経済指標を統計学的手法を用いて解析すると、経済政策の選択によっていかなる惨禍が起きるのかがよくわかる。

 国が公衆衛生の予算や住宅補助をケチると、国中にHIVや結核が蔓延し、労働力になりうる人々が自殺や心臓疾患やアルコール依存で沢山死ぬ。IMF(国際通貨基金)やECB(欧州中央銀行)など、エコノミスト達は帳簿上の数字と理論を重視し、国民の健康を過小評価しがちらしい。そして、結局は蝕まれた国民の健康に経済も足を引っ張られる。実世界では数えきれない数の悲劇に見舞われる家族が生み出され、国が地獄絵図と化す。

 これは今年読んだ本の中で最も有益な一冊。

・・・

 経済には、人々がアルコールを暴飲するようになる、ホームレスシェルターで結核に感染する、鬱病になるといったリスクの程度を高めたり低めたりする力がある。高める方向に働けば死亡リスクが増大するが、低める方向に働けばそれは保護となり、ホームレス状態から脱したり、人生を立て直す人が増え、死亡リスクは減少する。だからこそ、たとえわずかな予算変更であっても、それがボディ・エコノミックに---ときには予想外の---大きな影響を及ぼすことがある。

 本書 p236


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