2016年2月1日月曜日

カランコロン漂泊記 ゲゲゲの先生大いに語る


 水木しげるが2000年頃(1922年生まれなので70代後半くらい)に連載していたエッセイ&コミックエッセイ。文章と漫画が半々。

 主に幼少期や戦時中の思い出話など、ドライでユーモラスな作風で淡々と回顧が続くが、戦争で人の死を沢山見てきた人間の描写だと考えると凄味がある。顔見知りの兵士と共に敵襲に遭い「アンパンを分けてくれなかったのを思い出して助けるのをやめた」ら相方が死んだ話など、あっさりした語り口なのに凄惨な話が多い。

 本作はいかにして「水木しげる」という巨匠が誕生したか、という歴史的史料でもある。個人的に一番好きなのは「仕事以外は全て熱心だった」という氏の父親の話。父に育まれた芸術的素養と批評精神、山陰地方の鳥取の気候と文化、南方での強烈な戦争体験、それらが組み合わさり、あの作風とあの大人物は生まれたのだ。
 
 最近、筆者は奥田民生や水木しげるなど、脱力系の作品をチョイスすることが多い(去年は立川談志と一休宗純の反骨精神がブームだった)。難しい人生の問題に難しい顔して挑むのではなく、残る生涯できる限り、呑気に生きたい。そういう気分なのである。その重要性に気付いたのである。

 知れば知るほど、水木先生はマジですごい人だったんだと思う。合掌。
   

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